こんにちは。李哲です。
アメリカでの中医師:李宗恩博士*1の漢方薬治療例を翻訳しました。
中国語本文のリンク先は、
(01/20/2011 発表)
長年のアレルギー性鼻炎で鼻水が垂れる、不整脈を同時に治した例
40歳の男性。
体型は中。
彼の脈はとても不思議なものでした。
早くなったり遅くなったり、たまには脈が強くなり、たまには脈が小さくなる。
だいたい3~15回に1,2回止まってました。
ほかの症状は、
- 長年のアレルギー性鼻炎で鼻水が垂れる、毎晩鼻うがいをしないと眠れない。
- 深呼吸すると、最後は突然空気が消える感じがする。
- 横隔膜あたりは拘束感があり、
- 胆嚢には良性腫瘍があります。
- 手のひらは乾燥で裂けている。
- 舌診では白、湿。
- T4,T5の椎間板には圧痛点があります。
脈拍がとても特別なので、私は心臓発作が心配で先に心臓を治し、その後は胆嚢を治すことにしました。
最初は炙甘草湯を1週間処方、脈は少し良くなり、5~20回に1,2回止まるようになりました。ほかの変化はわずか。
2回目は心臓発作の処方を出したら、脈拍は少しよくなったけど、ほかの変化は著しくない。
私はしばらく考えました。
患者さんの何年も鼻水が垂れる症状が、ヒントだと思いました。長年の寒気と湿気が胸に溜まっているから、心臓が弱くなり、脈拍が乱れているでしょう。
不整脈と心臓病は、同時に解決しないといけない。
前の2回は片方に偏っていたので、効果は著しくなかったのです。そして、処方を以下のように変えました。
炙甘草 桂枝 人参 生地 麦門冬 麻子仁 茯苓 白朮 杏仁 陳皮 枳実 半夏 栝婁実 厚朴 生姜 炮附子(加工したトリカブト) 薤白 三七 阿膠(アギョウ)
李哲の説明:
以上の処方は、心臓発作・心筋梗塞を治すときの生薬も入っています。
心筋梗塞の前兆:胸の強烈な痛み、手足が氷みたいに冷たいのを、漢方薬1週間で治した例でも、似ている処方が出ているので、興味がある方はどうぞご覧ください。
患者さんは3週間後再診察にきましたが、脈拍はほぼ正常になり、たまに30~40回に1回止まる感じ。呼吸するとき、横隔膜の拘束感はまだ少しあり、長年の鼻水が垂れる症状は治って、毎晩鼻うがいの必要もなくなりました。
李哲の説明:
鼻水が垂れる症状は、鼻炎であろうと花粉症であろうと、鍼治療は効果があります。以下は私の鍼治療例、どうぞご参考に。
今は次の治療段階に進むところです。
胆嚢の良性腫瘍に関して、私が思うのは、きっと長年の寒気と湿気が胸あたりに溜まっているのと関係があります。
もし、最初異常な脈拍を治さないで胆嚢の腫瘍を治療し始めてたら、効果は薄かったと思います。
李哲の解釈
李宗恩博士の考え方を見ると、病気治療には段階性がありますね。
第一歩:先に心臓を解決する。
第二歩:胆嚢の腫瘍を解決する。
逆にするとダメ。
炙甘草湯の治療例は、ほかにもあります。
動悸、息切れに対して、「炙甘草湯」はうってつけの漢方薬。
李宗恩博士の治療例から分かるのは、処方箋が偏ってしまうと、全般の戦争・戦いでは勝てない。だから、満遍なく配慮して処方を組み立てる必要があります。
処方の組み立ては、そうとう漢方医の腕を試すところです。
一番難しいところでしょうか。
私は漢方専門医ではないので、あまり言えませんが、漢方薬の奥深さは伺えますね。漢方薬は西洋医学みたいに、暗記さえすれば処方できるものではありません。
以下は、中医学と西洋医学の違いに関して書いた小論文。興味がある方はどうぞご覧ください。
鍼灸治療の場合、偏ることがないです。
ニハイシャ先生の針を習ったとき、肺と心臓は隣同士なので、両方同時に解決する必要があると教わりました。
軽い鼻炎とか鼻水が垂れる症状には、大げさに両方とも治す必要がないけど、重い病気の時は両方治します。例えば肺水腫、喘息、呼吸困難の方は、肺兪を刺す以外に、肺兪の下の心兪も一緒に刺します。
同時に治した鍼治療例が一つあります。
呼吸困難は1回で治り、動悸もかなり改善された例です。
不整脈、アレルギー性鼻炎は難病ではないです。
鍼治療に数週間の時間をくれれば、良くなっているかどうかがわかるはず。
同じ症状の方は、ぜひ近くの信頼できる鍼灸院で治してもらってください。
*1:李宗恩博士の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。