こんにちは、李哲です。
100年前の名医:張锡純先生が書いた『医学衷中参西録』を読んで、面白い治療話があったので翻訳しました。
前回は先天性梅毒の子供、12年も治らなかったのを足三里だけで治した鍼治療例 を翻訳したけど、今回は漢方で治した例。しかも、梅毒3期にあたる危篤な患者さんです。
高熱、下半身が爛れ、意識障害の梅毒を漢方薬で治した例
一人の患者さん、梅毒で日本人の病院に20日くらい入院しました。頭と顔が腫れて、下半身は爛れ、全身が熱くて寝言を言い、意識不明の状態でした。
日本人医師が言うのは、「毒素が全身に広がったので、もう手遅れです。」
患者さんの友人:孫○○は私を呼んで、診察に行くことにしました。ほかの伝染病(温病)の可能性があるかも知れないので、生の石膏を8両煎じて瓶に入れて、お見舞いのワインだと言い訳して病室に持ち込みました。
【▲ 生薬:石膏の画像】
患者さんを見たら、頭と顔は赤く腫れ上がって、脈は洪実。温病が混ざっているのは間違いない。
瓶に入れた煎じ薬を、徐々に飲ませる事を伝えました。翌日、もう一度病院にお見舞い。
頭と顔が腫れ上がったのは消え、脈の強さも半減したけど、昨日より速い。まだ意識不明状態で寝言を言います。
石膏の汁は、まだ半分くらい残っていました。
私は自腹で党参を5銭買ってきて、煎じたあとに残りの石膏汁に混ぜて飲ませました。
翌日、もう一度病院にお見舞い。
意識も戻り、脈も普通になりました。
患者さんは退院して当院の漢方薬治療を決意しました。退院後、10日くらいの漢方薬で梅毒も治り。党参を使ったのは、性質があまり熱くないからです。
李哲の説明
梅毒は抗生物質:ペニシリンを継続投与するのが西洋医学のやり方です。ペニシリンは一定の人に効果があるかも知れませんが、上記の患者みたいに意識障害があったときは西洋医学も両手をあげます。
また、効果があると言われるペニシリン、その副作用も知らないといけません。副作用を知った上に、西洋薬を使うか漢方薬の治療を受けるかは、皆さんのご自由です。
▼ペニシリンの重大な副作用
- ショック
- 急性腎不全
- 溶血性貧血
- 血便を伴う重篤な大腸炎
- 出血性膀胱炎
引用先:医療用医薬品 : ペニシリン
以前、ニハイシャ先生の講義を聞いたとき、梅毒の治療例がありました。やはり便秘・高熱などの症状があって、大承気湯を使ったら翌日には治ったそうです。
ニハイシャ先生は間質性肺炎+心弁膜症を治したときも、大承気湯を使ってました。以下の記事、どうぞご覧ください。
ニハイシャ先生と100年前の張锡純先生の例を見ると、梅毒というのは「陽明病」*1に属します。「陽明病」の主な症状は、便秘・尿が黄色い・高熱・せん妄・精神障害など。
根本的な原因は、便が詰まっているから高熱が出て意識障害に陥る。便が出れば、自然に熱が下がり意識も戻ります。
梅毒で下半身(生殖器官など)が爛れるのは、熱がこもっているから組織が腐るのです。便が出て、こもっている熱がなくなれば、皮膚が爛れるのも治ります。
ペニシリンで菌を殺せるかも知れないけど、腸につまっている便はどうしますか?
ここが中医学と西洋医学の視野の違い。
中医学は全体像を見るけど、西洋医学は木を見て森を見ずの視野です。
ニハイシャ先生の論文では、全体像をみる中医学と一部しか見ない西洋医学に関して、詳しく説明しました。以下の記事、参考になると幸いです。
鍼灸では高熱、意識障害の梅毒を治せるのか?
私は治療例がないのでノーコメント。
もしほかの鍼灸医の症例があったら、またご紹介します。
以上、梅毒の様々な症状が出る原因と、漢方薬で治せる事を書きました。役に立つ情報になると光栄です。
*1:「陽明病」の解釈は、風邪薬の副作用:だるい、吐き気、めまい、下痢はなぜ起きるのか?中医学の理論では、薬で風邪が悪化したからですをご覧ください。