毎日悪夢にうなされて暴れるご主人、漢方を飲んだ当日からグッスリ眠れるようになった。

【※本記事は2020-06-02更新しました】

 

こんにちは。李哲です。

アメリカの中医師:鄭智城先生*1の記事を翻訳しました。

 

もとの中国語本文のリンク先は、

常年不断的奇怪和血腥的梦魇_郑智城

(2013-11-27 発表)

毎日悪夢にうなされて暴れるご主人、漢方を飲んだ当日からグッスリ眠れるようになった。

 

先日、ある先輩が私の母に電話して来ました。

先輩の悩み事は、ご主人が長年睡眠中に、手足が喧嘩しているみたいに動いて、彼女が殴られるから困る。

 

母「それでは、部屋を別々にして寝れば?」

先輩「なにか漢方薬がないですかね?悪夢にうなされて暴れないで、静かに寝てもらうように」

 

母はすぐ私に電話をチェンジして、先輩から詳しい話を聞きました。

 

ご主人は睡眠中に、よく危機一髪の夢を見る。他の人に追いかけられたり、どろぼうが入って窃盗したり、その後ご主人は無意識に手で反撃したり、足で蹴ったりするのです。

 

悪夢にうなされて暴れるご主人、漢方を飲んだ当日から治った

2回ほど、ご主人はどろぼうが窃盗しに入った夢を見て、踏ん張ってどろぼうを捕まえようとしたら、ベッドから落ちて顔に大ケガし、病院まで行ったそうです。

 

先輩の話を聞く限り、ご主人はひどい感じでした。

 

私はちょっと考えてから、先輩に聞きました。

「ご主人は普段心臓がドキドキする、心臓が苦しい感じはないですか?

「あります、あります!そして、主人はすぐ驚くみたいで、テレビを見てる時に部屋に入るだけでも、主人はびっくりしています。」

 

私はすぐ分かりました。

「了解です。原因が分かりました。処方箋を出しましょう。」

 

中医学は『望聞問切』四診合参ですが、このように電話だけ聞いて治療するのはよくあります。

 

ある症状は、画竜点睛(がりょうてんせい)の特徴があるので、聞いただけで分かる。ある「証」は、患者さんの顔を見ただけで処方箋が分かります。これは普段の経験の積み重ね。ただし、誰でもこのように分かりやすい症状があるとは限らないです。

 

今回処方したのは桂枝、西洋参、麦門冬、生地黄、麻子仁、アギョウ、生姜、ナツメ。3日分。

 

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麦門冬(ばくもんとう)の画像

 

数日後、先輩から電話が入りました。

電話に出たのはちょうど私。

 

先輩が話したのは、「主人は漢方薬を飲んだその日から、静かに寝られました。手を振ったり足で蹴ったりしてない。先生すごいですね!この漢方薬はいつまで飲めば良いですか?」

 

この先輩は私を助けた事があり、今回は恩返しする事ができました。

李哲の解釈と感想

 

鄭先生の処方箋は、『傷寒雑病論』の中の有名な炙甘草湯(しゃかんぞうとう)をアレンジしたものです。人参と炙甘草を西洋参に変えた理由は、おそらく陰を補って熱を下げるためでしょう。

 

悪夢を見る。殺し合いとか事故で血まみれの死体になったり、とにかく怖い夢は体内の陽気が足りないのが1つ目の原因です。

 

2つ目の原因は、心臓が弱くなった時。

心臓が弱いのは2つのパタンがあります。

 

  1. 心臓のパワー(駆動力)が足りない。中医学では陽虚と言います。
  2. 心臓のパワー(駆動力)が足りるけど、心臓の送り出す血が足りない。中医学では陰虚と言います。

 

中医学の理論では、肝臓と心臓が主に睡眠と関係がある。

睡眠の質が悪いのは、この2つの臓器の働きを先に良くするべき。

 

鄭先生が「心臓のドキドキがあるのか?」を聞いたのも、心臓の調子を確認するためですね。動悸を炙甘草湯で治した例はほかにもあります。どうぞ以下の記事を参考にしてください。

 

www.li-hari.net

 

鍼治療の場合は、肝臓か心臓かを分けない。

内関と神門だけで、十分な効果があります

足りなかったら、背中の肝兪・心兪などで調整すれば良いですね。

 

私は臨床で内関1つ刺しただけで、その日の夜から睡眠がとても良くなった例がある。内関で睡眠の質が変わるのは、患者さんからしばしば聞いています。

 

www.li-hari.net

 

西洋医学は中医学みたいに肝臓か心臓かを分けません。不眠症の患者さんであれば、すべて睡眠導入剤を処方。

 

睡眠導入剤の副作用は、夢遊病(むゆうびょう)。

具体的な症状は、寝ている間に車運転したり、人を殴ったり、お菓子を食べたりします。

 

過去の夢遊病の治療例が一つあるので、貼っておきます。読んだことがない方は、どうぞご覧ください。

 

li-hari.hatenablog.com

 

夢遊病(むゆうびょう)と睡眠薬の関連性は、日本のサイトでも報道しています。以下のリンク、参考にしてください。

 

【新連載】4.睡眠剤の副作用を再点検する – 全日本民医連

 

睡眠薬による夢遊症状に要注意:日経メディカル

 

*1:鄭智城先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。