首肩の痛み・けいれんを1日で治した漢方薬「桂枝加葛根湯」

「※本記事は2019-09-14更新しました」

 

首肩の痛み・けいれんを、頸肩腕障害(けいけんわんしょうがい)だとも言われるそうです。西洋医学では手術・リハビリですが、漢方薬の治療効果はどうなのか?今日の翻訳文を見れば分かります。

 

こんにちは。李哲です。

今日は中国・郝万山先生の漢方薬治療例を翻訳しました。

 

中国語本文のリンク先は、

郝万山经方36首故事1 - 好大夫在线

翻訳文

1984年、私が83年生の学生さんたちを連れて、懐柔中医病院で研修したときの事です。

 

夜11時すぎて私は寝たけど、一人の研修生に起こされました。

「先生、今日の午後、病棟に新しい患者さんを受け入れたけど、病状がすごい重いです。院長先生は郝先生に来てほしいそうです」

 

着替えて病棟に行きながら、患者さんの状況を聞きました。

この患者さんは、午前中から寒くなったり熱くなったりして、交替で片方の胸鎖乳突筋がけいれん。患者さんの頭も片方に曲がっている。

 

入院されたとき、学生さんたちは按摩したら頭がまた逆方向に曲がり、仕方がなくて院長先生を探しました。

 


 

院長先生は神経内科の若い専門家で、神経系統の検査をしてから脳血栓症になる可能性があると仮診断し、入院治療になりました。

 

入院したあと、学生さんたちは患者さんの面倒をみながら按摩を続けたけど、やはり頭が片方に倒れる。

 

病院側は薬を静脈点滴し始めたら、1時間後に両側の胸鎖乳突筋がつり始め、首背中の筋肉も痙攣し始めました。学生さんたちは按摩を続けてやったけど、効果がなし。

 

パダパダして夜中の11時になり、今度は熱が40度まで上がって痙攣がひどくて、目も釣り上がりました。若い院長先生は緊張して、「郝先生をすぐ呼んできて!」と指示を出したのです。

 


 

私が病棟に行ってみたら、患者さんは40代の女性。

この歳で脳血栓症になる人は少ないです。

 

彼女の著しい症状は、首肩の筋肉がけいれんして痛い。しかも高熱があり、寒がりなどの表症がありました。脳内圧は高くなくて嘔吐もない。頭痛はあるけど、強烈な頭痛ではなかったです。

 

私はこれは重病ではないと判断して、「桂枝加葛根湯」を処方しました。葛根は40g、桂枝は15g、芍薬は30gを使用。

 

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桂枝(けいし)の画像。


もともとの桂枝加葛根湯には、こんなに大量の芍薬を使ってないけど、筋肉のけいれんを収めるために大量に使いました。ほかに少しアレンジして入れたのは、よく覚えてないです。

 

そして、静脈点滴を中止する事を薦めました。

彼女の舌診ではベロが薄くて赤くない、鼻水がダラダラ。熱証ではないからです。

 

当時、点滴していたのは「安宮牛黄丸」をアレンジした注射液で、本当の熱証には効果がある。しかし、点滴して1時間後に全部の筋肉がつり始めたのは、注射液の質が寒いので逆効果が出たのです。

 


 

漢方薬を処方したあと、私は宿舎に帰って寝ました。

翌日の朝8時に病棟に行って巡回したら、あの患者さんはあぐらをかいて座ってました。首はけいれんしてないけど、身動きもしてないでまっすぐに座ってました。

 

「調子はどうですか?」

彼女は笑いながら、「先生の漢方薬を飲んで30~40分くらい経ったら、背中が焼けたみたいに熱くなり、その後は全身に汗をかきました。シャツもベストも全部濡れて、その後は首のけいれんが治りました」

 

「けいれんが治ったのに、なんでこんな姿勢ですか?」

「首がまだ痛いです」

 

「どこがまだ痛いですか?」

彼女はハイネックのシャツを解けて、見せてくれました。

なんと、首後ろが全部青アザになっていたのです。

 

「え?!これはどうしたんですか?」

「先生の学生さんたちが、昨日一所懸命にマッサージしてくれたからです」

 

当時の学生さんたちはまだ2年生で、按摩の技も熟練してなかったけど、治してあげたくて頑張った結果、内出血になったのです。

 

マッサージの力が適度じゃないと体を痛めます。

以下の治療例、参考になると幸いです。

 

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漢方薬を1日飲んだだけで、けいれんがなくなり、熱も下がりました。

でも、3~4日は入院しましたね。

青アザが治ってからじゃないと。

熱が下がったらか退院させるのもいけないです。

 

あとで、院長先生が私に質問しました。

「退院するときは、カルテに診断書をどう書いたら良いでしょうか?手足も問題ないし、脳血栓症だと書くのは妥当ではないから」

「ウィルス性筋けいれんで良いですよ」

 


 

頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)、頚椎ヘルニアは現代人に多い症状です。特にパソコン作業が多い人。

 

長期的な首肩の筋肉の運動不足で、首肩の痛み・後頭部の痛みなどが生じたとき、桂枝加葛根湯はとても良い処方です。

 

一般的に私の処方はこうです。

葛根30g、少ないときは20g。

(20g以下は効果がありません)

炙甘草は6~10g。

芍薬30g、桂枝15g。芍薬が増えると桂枝加芍薬湯になります。この上に葛根を追加する感じ。

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葛根(かっこん):他の木にくっついて、一番高いところまで上る植物。

 

芍薬と甘草がセットになると、酸甘化陰、首肩の筋肉のけいれんを緩和します。生姜、ナツメは頸肩腕症候群にはあまり使わない。

 

臨床でみると、パソコン作業が多い人は、筋肉がずっと緊張している状態で、気血の詰まりが生じやすいので、風邪と寒気にやられやすいです。

 

特に夏は冷房が効いて、冷たい風を流しているので、みんな風邪と湿気のトラブルがあります。

 

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だから私は2つの生薬を追加する。

威霊仙10gとジンギョウ(秦艽)10g。

気血の流れが良くなったあと、また津液が足りなくて血の流れが渋るときが多いので、鶏血藤(けいけっとう)30gを追加します。

 

一般的に以上の処方箋を使います。

あなたが好きならなつめ、生姜を入れても良い。

 

たくさんの患者さんは「桂枝加葛根湯」を飲んだあと、首肩の筋肉の痛み・けいれんが治りました。

李哲の感想

「桂枝加葛根湯」は日本で既成品もあります。

この漢方薬の組み合わせは、「葛根湯」に桂枝をプラスしたもの。

 

葛根湯は風邪の漢方薬として有名です。

なぜ風邪を治せるのかは、次の記事で詳しく説明しているので、どうぞご覧下さい。

 

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首と肩が痛い頚腕症候群は、鍼灸の得意分野だと言えます。漢方薬の効果と互角するくらい強力。基本的に1回鍼をすれば、痛みが緩和し始める。

 

大したツボも刺さないです。

鍼灸医であれば、よく知っているツボ。たとえば後谿、申脈、肩井、天柱、風池、だいちゅう(骨会)などなど。この中の2~3個選んで刺せば、十分効果が現れる。

 

私は重症でなければ、後谿・申脈だけにします。

以下は過去の鍼治療例。

1回で首肩のコリが楽になりました。

 

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以前、私は足つぼ整体の仕事をしていたので、マッサージで青アザになるのはよく分かります。体重で押すのではなくて、手の力で揉むと青アザになりやすい。

 

上記の学生さんたちはそうとう頑張ったと思うけど、逆効果が出たのは仕方がないですね。まだ新米だから。

 

熟練者になれば、マッサージでも首肩の痛み・けいれんが改善できます。

漢方薬・鍼灸治療はさらなる効果がある。

 

以下は数年前の整体の症例、参考になると幸いです。

 

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