【※本記事は2020-03-21更新しました】
こんにちは。李哲です。
今日はアメリカでの中医師:李宗恩博士*1が最近書いたもの。最後には私の感想文があります。
中国語リンク先は以下。
科學雜誌(Science):藥廠與FDA藥物審核專家之間隱藏的利益輸送 – 當張仲景遇上史丹佛
- 米科学誌・サイエンスが暴露:製薬会社と新薬審査員の隠れた関係
- アメリカ食品医薬品局の規定には抜け穴がある
- 製薬会社と新薬審査員のドロドロの癒着関係
- 製薬会社の望みは、死ぬまで飲んでくれる薬
- 西洋医学の先生は、製薬会社に利用されている
- 西洋医学の研究と臨床の溝は深い
- アメリカドラマに映っている、医療現場の笑い話
- 李哲の感想
米科学誌・サイエンスが暴露:製薬会社と新薬審査員の隠れた関係
以下は著名な科学誌・サイエンス(Science)が7月出版したもの(06 July, 2018 / Vol 361 / Issue 6397)。
おもて表紙には、製薬会社とアメリカ食品医薬品局(FDA)の新薬審査員たちの隠れた利益関係を暴露して、その後は幅広い範囲で討論とアメリカ食品医薬品局(FDA)への指摘が起きました。
これはもともと「公開した秘密」です。
世界で著名な科学雑誌が、政治若しくは法律の雑誌でもないのに、大量のデータを調べて、おもて表紙で暴露するのは事情のひどさを証明している。良心的な記者であれば、発言しざるをえなくなっています。
雑誌の文章は長いですが、皆さん最後まで読んでほしいです。
特に例といて出した、セロクエル(Seroquel)とイラクに派遣された軍人Jacob Sitkoの死亡。そして、セロクエル(Seroquel)と新薬審査員の間、金銭の流れ数字などを見て嘆くしかない。
アメリカ食品医薬品局の規定には抜け穴がある
以下は簡単に説明します。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、名文で規定しています。
●新薬の審査員は、製薬会社との関係ともらうお金を公表しないといけない。
●もし利益関係があったら、新薬の審査員になれない。
雑誌の文章では、2つの抜け穴があると指摘しました。
- 情報公開は審査員の誠心(honor system)に基づく。ほかの人・団体は深く調べない。
- 利益関係というのは、審査する直前と直後のワイロを含むだけ。数年後のワイロは、含まれていない。
だから長年の間、製薬会社と新薬審査員の間には、言わなくても分かるルールができました。
事前にワイロがなくても、新薬審査員たちはなんとなく期待します。
製薬会社も期待に負けず、数年後にはいろんな方法で、支持してくれた新薬審査員たちに報酬を与える。
例えば
- 会社の顧問になってもらう。
- 審査員の研究項目のスポンサーになる。
- 全額負担で、きれいな観光地で開かれる学術研究会に参加させる。
このような循環は、理解しにくいこともないです。
製薬会社と新薬審査員のドロドロの癒着関係
たとえ審査員が良心的で、製薬会社の影響を受けなくても、もしその研究計画が大量の資金をもらえば、研究の規模と成果はほかの専門家よりも優れる。名前も売れやすい。
名前が売れたらさらにアメリカ食品医薬品局(FDA)に雇われやすくて、新薬の審査員になれる。一旦、新薬審査員になったら、さらに有名になり、もらえる研究費用も上がります。
このような循環、最初は正義の味方であっても、何回か行うと製薬会社の誘惑に負けて「同情心」が生まれます。
新薬の審査は、もともと主観的な成分が大きい。
一旦、製薬会社と「感情」が生まれたら、いろんな理由をつけて自分と周りの人を説得して、新薬がアメリカ食品医薬品局(FDA)の審査を通るようにします。
お互い利益関係は、すでに数十年前からありました。
たくさんのアメリカ食品医薬品局(FDA)官僚は退職したあと、製薬会社のエリート職員もしくは給料が高い顧問になります。
表面的な理由は、彼らが専門知識があり、アメリカ食品医薬品局(FDA)の規定と流れが分かる。就任したあとは、彼らの特徴を活かすことができる。しかし、本当の原因は非常に複雑です。
製薬会社がエリート職と顧問の椅子をFDA官僚に上げるのは、もちろん選択性があります。
FDAにいるとき、邪魔する官僚はこんな待遇がありません。
仲良い官僚だけ、ありえない金額の給料がもらえる。
現在、アメリカ食品医薬品局(FDA)で就任して新薬の審査員をする人たちには、この関連性が自然に分かって、一旦チャンスを見つけたら必ず製薬会社と仲良くしようとします。
今日の利益のためではなくて、後半生の幸せのために。
製薬会社の望みは、死ぬまで飲んでくれる薬
実は、製薬会社のたくさんの科学者たちは、本当に人類の病気を治すために研究している人が多いです。ただし、彼らの願望と志は、製薬会社の高層部門と株主の意向ではない。
政策を作る人たちは、あらゆる方法で利益を求めています。
若者にタバコの中毒になって欲しいように。
彼らにとって、
一番良い薬は、病気を治す薬ではない。
ある数値を改善するけど、死ぬまで飲む必要がある薬こそ、一番儲かる製品です。
副作用に関しては、あれはどうでも良い。
裁判になった時、払う金額が売上より少なければ、良いビジネスである。
たくさんの製薬会社が毎年訴訟されて、何億ドルの賠償金と和解金を払っているのに、なぜ製薬会社は続けて宣伝しているのか?
薬の売上は、数十億ドルで入るから!
西洋医学の先生は、製薬会社に利用されている
臨床で診察をしている西洋医学の先生も、たくさんの人は患者さんを治すためです。非常に責任を持って仕事しています。
しかし、西洋医学の先生たちの主な道具は西洋薬。
この道具は、先生がコントロールするものではない。
臨床での西洋医学の先生は、西洋薬に関して詳しくありません。
一つの西洋薬を徹底的に調べるのに、とうてい数年の時間がかかるから。西洋医学の先生は、そんな暇がありません。しかも、市販の西洋薬は山ほどあります。
西洋医学の先生の薬に対する知識は、完全に製薬会社の説明から得ている。
製薬会社の高層部門と貪欲株主たちの影響で、薬は西洋医学の先生の手を借りて、数千万人の患者さんに渡されるのです。
西洋医学の研究と臨床の溝は深い
西洋医学が科学的根拠があると信じる人でも、分かってほしいです。
西洋医学の医学研究と臨床治療は、非常に深い溝があります。
メディアではよく医学研究の進歩があると言うけど、実際に臨床では製薬会社の直接・間接的なコントロールをされている。医学研究から臨床までは、めちゃくちゃです。
もう一つ。
西洋医学業界の研究費用は、ほとんど製薬会社が提供しているので、製薬会社の貪欲に汚染されているのも事実です。
アメリカドラマに映っている、医療現場の笑い話
厳しい内容ばかり書いて、皆さんも疲れたでしょう。
ちょっと笑い話を皆さんに紹介します。
アメリカで大ヒットの喜劇ドラマ:ビッグバンセオリー(Big Band Theory)。
前後の数話には、製薬会社の研究チーム担当者Bernadetteが登場します。
新しく開発した新薬はひどい副作用があって、患者さんは直腸漏れ(rectal leakage)で大便が勝手に出てくる。
Bernadetteはいろんな方法を探したけど、この副作用が解決できなくて非常に困っていました。
この問題が解決される前に、製薬会社の弁護士はずっと患者さんに言いました。「たくさんの原因で直腸漏れが起きます。あなたはこの薬でなったのを証明できますか?」
後々になって、患者さんからの圧力が強くなり、言い訳ができなくなりました。
最後、Bernadetteは「天才的なアイデア」を出したのです。
彼女の提案は、この薬の定義を改める。どんな疾患を治すかは後にして、とりあえずこの薬の効能を「便秘薬」に定義する。
結果的に、製薬会社はこの事故で赤字になったのではなく、「便秘薬」のおかげでボロ儲けしました。Bernadetteも失業寸前の人から、会社の救世主になったのです!
ドラマの笑い話だけど、反面的に製薬会社の運営状況を照らしています。
李哲の感想
日本語で調べてみたら、こんな記事がありました。
興味がある方はどうぞご覧ください。
①まったく変わらぬ「医師」「製薬企業」「官僚」癒着の実態を告発する--上昌広
②岡山大医学部と製薬会社の癒着を告発した2教授が停職処分に│NEWSポストセブン
10何年前、私が中国の医学部を卒業し大学病院で研修する時、病院の医薬品輸入責任者と製薬会社の裏話はたくさん聞きました。
とにかく接待がすごい!
一般サラリーマンが買えない高級タバコ、お酒は責任者に渡され、毎晩接待の宴会が続いてました。
ただし、当時の利益関係はすぐ発生するもので、アメリカみたいに数年後に徐々に渡すものではなかったです。
アメリカはすごいですね~
すぐ渡すのではなくて、巧みに数年後若しくは退職後にいろいろ優遇を与える。後半生の幸せ。
こりゃ~
調査するのも大変。
バレにくいから、抵抗する官僚がいないでしょう。
日本のは詳しく知りませんが、おそらく変わらないと思います。
必ず新薬を通すために、いろいろ団体・マネーが動いているはず。
新薬を病院の先生の気に入ってもらうために、いろいろ営業している話はさんざん聞きました。
売ってくれれば、お金をあげる。
このようなやり方は、別に悪くないと思います。ただし、売るのが副作用だらけで効果が薄い。患者さんを早死にさせる毒薬だったら?
命に関わる医学。
金儲けが最優先のビジネスになって良いでしょうか?
李宗恩博士の記事で一つ虚しいところがあります。
西洋医学の先生、臨床での武器は西洋薬。
西洋薬なしで、何も治療できない。
言い換えると、西洋医学の先生は、製薬会社に支配されています。
中医学の鍼灸・漢方薬は、すべての治療が先生の手に握られています。(鍼と生薬の原価はコントロールできない)
どんなツボと生薬を使うか。
完全にほかの団体・人と利益関係がありません。
人の顔を見ながら、仕事する必要もない。
西洋医学の先生たち、もし本当に患者さんのために治療したいなら、先に製薬会社の支配から抜ける事だと思います。
*1:鄭智城先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。