【※本記事は2019-05-03更新しました】
こんにちは。李哲です。
今日は楊貞(ヤンジェン)医師の治療例の続き。
前回の内容は、以下をご覧ください。
- 治療例8:子供の食べる量と体力が増えて、便秘も良くなった
- 治療例9:喉がんの術後、声が出ない、呼吸困難、咳する患者
- 治療例10:肥満症の過食症、倦怠感などが治った
- 倪海厦(ニハイシャ)先生の評価
- 李哲の感想
治療例8:子供の食べる量と体力が増えて、便秘も良くなった
女の子、10歳、痩せ型。
症状:
体が弱くて、よく風邪を引いて点滴する。
食欲は普通、食べる量が少ない。
睡眠は良いけど、昼間の気力はない。
便秘、2~3日に1回排便、お腹が痛いのはない。
喉は渇く、温かい飲み物をほしがる。
足は温かいけど手は冷たくて、手の色が真っ白。
おでこは温かい。唇は乾いて色は薄い。
舌苔には小さな赤い点がたくさんあって、舌の真ん中は人字型で裂けている。
脈診では弦緊。
診断:脾臓の陽気が足りない。
治療:桂枝4、芍薬8、甘草3、なつめ10個、生姜2切り、◯◯7、◯◯7、◯◯7、◯◯7、党参7。
6杯の水で2杯に煮詰める。
毎回飲む時には、2分の1杯だけ麦芽糖を溶かして飲ませる。1日3回。
漢方薬を飲んでから、食べる量と体力が明らかにが増えて、顔色も良くなりました。大便は毎日1回。
半月後、天気が寒くなり始めてから夜尿症がありました。そして、手足が氷みたいに冷たい。本来の処方箋に木通3、細辛3を追加。ほかは変動なし。
しかし、効果はあまり良くなかったです。夜尿症は治らない、しかも頻度は増えました。木通と細辛を取り消して、もとの処方箋に六味地黄丸を追加したけど無効。八味地黄丸に変更しても無効。
ニハイシャ先生、どうしたら良いでしょうか?
治療例9:喉がんの術後、声が出ない、呼吸困難、咳する患者
女性、77歳、痩せ型。
喉がんの手術をして3年経ちます。
3年前、声が出なくて検査に行ったら喉がんだと診断され、即手術をしました。
手術して3ヶ月後、また声が出なくなり、喉が痛い、咳する、痰が絡んで出ない症状が起きたのです。
ずっと痰を出す西洋薬と消炎鎮痛薬を使って、この10日は食べるのも呼吸するのも辛くて、水すら飲めない。完全に声も出なくなりました。
息をするとき、喉から痰の音が鳴る。
寒がりで足は氷みたいに冷たい。
大便は毎日あって、頻尿。食欲はあって、お腹もすく。
手のひらと項、おでこも熱い。
顔には鼻先だけ光があって、ほかのところには艶がない。舌苔は無。
右脈が左脈より強くて、右脈は腕まで上がっている。附骨脈はない。
診断:裏寒。喉の陰実。
治療:
①その場で◯◯湯を飲ませたら、1分後に水が飲めるようになりました。呼吸も落ち着いて、喉から痰の音がするのも減りました。
②生半夏3、桂枝3、炙甘草3、加工したトリカブト(附子)5、生姜2切り、◯◯
3、◯◯5、◯◯5、◯◯5、◯◯10、茯苓5、白朮5、蒼朮3、天南星3、麦門冬3、◯◯8、◯◯3、乾姜2。
3日後に再診察に来て教えてくれたのは、当日の昼に漢方薬を飲んでから1杯のお粥が食べられた。精神状態も良くなったけど、咳がまだ多い。特に夜中、咳しすぎて喉が痛い。
足はまだ冷たい。
夜寝ているときは、頭に汗をたくさんかく。
もともと、後頭部が熱くなるのは、漢方薬を飲んでから減った。
治療:前回の処方箋に加工したトリカブトを6に変更、生の硫黄4を追加で、ほかは変動なし。
その後、患者さんは地元に帰って、咳は相変わらずひどい。
患者さんの家族は漢方薬の中毒だと言い、治療を中止しました。
ニハイシャ先生、この患者さんの咳はどう治すべきですか?
治療例10:肥満症の過食症、倦怠感などが治った
女の子、24歳、肥満症。
100kgくらいあります。
症状:この2年、生理は2ヶ月に1回来る、最近は2ヶ月半に1回。
毎回生理痛が1日あり、生理出血は3~5日。
量は普通、色は濃い赤色、たまに血の塊があり。
生理前は胸が張る。
朝歯磨きするとき、気持ち悪くなる。
この1年、ほぼ毎月風邪を引いて咳をするから、病院に行って点滴します。
たまに胸がけいれんするように痛む。
気力は足りない。
夜の睡眠はまだ良いけど、昼は倦怠感で眠ったい。
過食症、食べる量はとても多い。
昼は暑がりだけど、夜は寒がりで厚い布団をかぶる。手足は温かい。
喉は渇かないので、水を飲むことを忘れる。
汗が出やすくて、寝汗はかかない。
便秘、2~3日に1回の排便。便秘だけど、お腹は痛くならない。おならはする。尿の色は薄い黄色。
舌苔は薄い黄色、舌の辺縁部はザギザギ。
脈は細弱、左脈はほとんどない。
診断:真寒偽熱、少陰病。
治療(単位は銭):
◯◯2、◯◯2、炙甘草2、麻黄2、細辛2、◯◯5、土瓜根(この生薬は買えません)、芍薬10、桂枝3、三稜3、◯◯3、◯◯3、◯◯3、◯◯3、◯◯3、◯◯3、柴胡5、黄芩3、生姜2切り、生半夏3、厚朴3、茯苓5、白朮3、澤瀉5、◯◯3、◯◯3。
9杯の水で3杯にまで煮詰める。1日3回。
最初の1杯目の漢方薬を飲んだ1時間後、全身が寒くなり始めたけど、唇が麻痺する感じはない。翌日は3回黒い便が出て、その後は毎日1回便が出る。精神状態は良くなり、倦怠感と眠ったい症状は減りました。
この処方箋は10日飲んで進歩しているけど、食欲は相変わらず強すぎる。前回の処方箋を昼と夜寝る前だけにして、朝と昼はもう一つの処方箋にしました。白虎湯(石膏4両、知母5、炙甘草2)
2週間後には石膏を6両に増加。
この処方箋を3ヶ月飲んでから、彼女はどんどん精神状態が良くなり、食欲は50%減り、ずっと食べ物を探したい気持ちがなくなりました。
しかし、生理は3ヶ月で来るようになり、出血量も増え。生理痛もあるけど前の半分に減りました。ほかの症状は、ほとんど消失。
2つの処方箋が面倒くさいので、生理のあとに処方箋を変えました。
治療:柴胡5、白朮5、茯苓5、◯◯3、◯◯2、大黄2,三稜3、莪朮3、桂枝3、芍薬3、◯◯3、◯◯3、生姜2切り、炙甘草2、石膏50、知母6、なつめ10個。
新しい処方箋にしてから、その日の夜また全身が寒くなりました。
その後の1週間は、毎日黒い便が2回出ました。
現在はまだ漢方薬を飲んでいるところ。
この患者さん、私は自信がありません。
ニハイシャ先生の指導がほしいです。
倪海厦(ニハイシャ)先生の評価
楊貞は中国の医師で、20年以上の勤務歴があります。
彼女は西洋医学がどのくらい治療できるかを知っています。
こちらに来て研修してから、彼女は一般の中医師よりかなり強くなっている。
研修しただけで、こんなに正確な判断ができています。処方箋はちょっと複雑になっているけど、これは彼女のせいではない。彼女は新米だから。
でも、彼女の思考は経方の道に入り、選んだ生薬は患者さんの症状にも合っています。
もう少し時間が経ってれば、彼女はもっとうまくなって、地方の柱になるでしょう。
私は正規品を買った学生さん、師匠を尊重する学生さんしか指導しません。
中医学の普及には品が最優先です。
海賊版を販売・購読した学生さん、師匠を尊重しない学生さんは、私の陣営には入れない。国際で恥をかきたくないから。
私がどこに行っても、なるべく皆さんを呼んできて指導し、最初の経験と知識を補充してあげます。
皆さんの楊貞医師の治療例を見れば分かりますが、彼女は私の指導をずっと受けられます。私が死ぬ日まで、このような訓練は中止しません。
李哲の感想
今日でやっと10個目まで翻訳しました。
最後の3つの治療例は成功した例ではないですが、効果は現れています。
中国は違法コピー・海賊版の物が多い。
恥ずかしいですがこれは事実です。
最近は知的財産権が強化されて、音楽のダウンロードなどできなくなっています。
もう少し年数が経ってれば、正規品ばかりになるでしょう。
違法コピーの話は後にして、 以下は私なりの解釈です。参考になると幸いです。
治療例8の解釈
子供の虚弱体質、よく風邪をひく、食が細いなどは「小建中湯」で解決できます。食べられると言うのは、脾胃の調子を表す印。
脾胃が弱いと五臓六腑に輸送するエネルギー(気血)が足りないので、風邪はもちろん、ほかの病気にもなりやすいです。
子供の夜尿症は、六味地黄丸・八味地黄丸で効かないのは、原因が分かります。八味地黄丸は腎臓の陽気が足りない人、特に年寄りに合います。
しかし、子供は腎臓の陽気が足りないのではなくて、それを封蔵する力が足りないのです。関連の処方はありますが、ここでは非公開にさせていただきます。
鍼灸治療の場合、陰陵泉下1.5寸の腎関(董氏奇穴)と小指にある夜尿点(奇穴)が良いかも知れません。
私はまだ夜尿症の子供の治療をしたことがないので、今後もしあったら発表します。
治療例9の解釈
足が氷みたいに冷たくて、頭から汗がふきでる。後頭部が熱い。これは、がん細胞が脳に転移した可能性を示します。
3年前に喉がんの手術をしたのにもかかわらず、また喉がつらくて食べられない。水すら飲めない・呼吸困難などの症状が出ました。喉がんの再発だと言えます。
つまり、手術しても本来の病気は再発。その上に、がん細胞の転移で新しい癌をもらう。
治せば治すほど悪くなる。
これが西洋医学の「標準治療」。
漢方薬を飲んでから、ご飯が食べられて後頭部の熱いのが減ったのに、咳が治らないから漢方薬のせいだと言うんですね。
こんな患者さんは、ニハイシャ先生が言う治らない人。
治療例10の解釈
肥満症を治す時、ニハイシャ先生は石膏を大量に使います。
楊貞先生の処方を見れば分かりますが、石膏は6両になっている。1両は約35gなので、 6両は210g。
1日の処方箋に石膏だけで210gなのです。
日本の皆さんはビックリするかも知れませんが、経方家にとって日常茶飯事。
ニハイシャ先生は1日の処方で、16両(560g)まで出した事があります。
食欲が強すぎて食べすぎる。
西洋医学では胃袋を小さくする手術をしますね。胃袋が小さくなれば、自然に食べられなくなるから。
ただし、手術は不可逆的なので、もう少し食べようとしても胃袋が伸びないので辛いです。
中医学では胃に熱がこもっているから、消化が早すぎてお腹が空くと言います。だから、胃の熱を冷ます石膏などで食欲を収めます。
西洋医学みたいに切らないので、胃袋の伸び縮は自由。
もっと食べたい時でも胃に入ります。
黒い便が出るのは、胃腸の出血があるのを示します。食べ物がたくさん入ると、胃腸の壁は圧力に耐えられず破れて、微量の出血が生じる。
専門的にダイエットの鍼はしたことがないので、なんとも言えないですが、当院の考え方としては日常での禁止物は全部やめて、あと運動をして鍼治療を受ければ、自然に痩せられます。
以下は以前書いた記事。参考になると幸いです。
(おわり)