血圧220が140まで下がり、極度のうつ病と肥満症・全身が辛いのを改善した漢方薬症例

こんにちは。李哲です。

倪海厦(ニハイシャ)先生の真伝弟子、著名なアメリカの中医師:李宗恩博士*1の漢方薬治療例を翻訳しました。

 

中国語本文のリンク先は、

血壓220/120mmHg,極胖,抑鬱,全身不對勁 – 當張仲景遇上史丹佛(05/13/2014発表)

 

血圧が220、極度のうつ病と肥満症・全身が辛い女性

 

04/08/2013

初診。

 

患者さんはロシア人女性、50代。

主訴:血圧が常に220/120mmHg。緊張するときは、260mmhgまで上がる。体重は300ポンド以上(約140kg)、非常にうつ状態で全身が辛い

 

西洋薬を飲んで、たまには145/105 mmHgまで下がる。患者さんは自分がとても太っていると思い、うつ状態です。睡眠中はたまに股関節痛で目が覚める。病院の検査で分かったのは、胆石症と脂肪肝。たまに舌が腫れるそうです。

 

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中医学の問診内容と高血圧の原因:子宮全摘手術!

 

以下は問診内容です。

寒熱:手足は氷みたいに冷たい。

上半身が熱くて、下半身は寒い。

 

汗:汗をかくのが難しい、寝汗をかく。

 

睡眠:夜10時に就寝して朝5時に起きる。寝つけるのは早い。夜の2~3時に良く目が覚める。寝起きは非常につらい。

 

食欲:食べられるけど、食欲がない。胃が腫れている感じ、しょっぱいものが食べたい。たまには甘いものを欲しがり、苦い料理が苦手。

 

便通:毎日3回、形がある便と崩れた便で不規則。残便感がある。

尿:尿量が少ないけど、回数が多い。排尿時はつらい。

 

口渇:この3ヶ月は喉が渇いて、熱いのが飲みたい。

 

生理:1999年、子宮全摘手術のとき大出血が起きて、手術後に高血圧症が発作

 

脈診:浅い、非常に弱い、尺脈はほぼ触れない。

舌診:舌苔は薄い白、舌は少し乾いている。

 

眼診:腎臓の反応は正常。肝臓の反射区が大きすぎ、穴と丸い紋理がある。

 

▼李哲の説明:肥満症と高血圧症の原因に関しては、ニハイシャ先生の小論文をご覧ください。ためになると思います。

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血圧は140まで下がったけど、半年間漢方薬を飲めない時期があって病状は不安定

 

処方箋:既製品の柴胡竜骨牡蛎湯+酸棗仁湯+五苓散。

 

鍼灸のツボ:合谷、太衝、曲池(鍼をする前は183/105mmHg、鍼を抜いた後は逆に208/108mmHgまで上がった。)

 

▼李哲の説明:上記の記述には、高血圧症の原因がハッキリ書かれています。子宮全摘手術の後に起きた。西洋医学は因果関係を否定するかも知れないけど、患者さんは分かります。

 

ちなみに、子宮全摘手術はいらないもの。

子宮がん・子宮頸がんだったら治せる漢方薬があるし、鍼灸でも対応可能です。以下はニハイシャ先生が書いた論文。参考にしてください。

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04/16/2013

患者さんの報告:

4月9日~11日、収縮期血圧は140くらい。

粉薬は3gを飲むと良い感じだけど、6gを飲むと血圧が220/120mmHgになる。漢方を飲んでいる間は、西洋薬を止めている。

 

脈診:寸脈と人迎脈は非常に弱い。

舌診:舌は腫れて大きい、舌苔は薄い白、舌は少し湿っている。

 

処方箋:患者さんは旅行に行くので、漢方はしばらくお休み。

鍼灸のツボ:合谷、太衝、曲池。

 

04/23/2013

患者さんの報告:病状は良くなったり悪くなったり不安定。以前はショッキングな経験があったそうです。

 

脈診:非常に弱い。尺脈はほとんど触れない。

舌診:舌は薄い白。

 

鍼灸のツボ:三陰交、地機、陰陵泉、合谷、太衝、曲池。

(5月~翌年1月、患者さんはロシアに戻り、半年間は漢方薬を飲んでないです)

 

▼李哲の説明:ショッキングな事件、もしくはひどく傷ついた恋愛経験などは五臓六腑への打撃が強いです。以前、心理的な原因で生理が来ない女性がいたけど、幸いに3ヶ月で解決しました。以下の記事、どうぞご参考に。

 

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血圧は170前後まで下がって、胃酸逆流の症状が出た

 

01/31/2014

患者さんの報告:収縮期血圧は上がったり下がったりして、大体170くらい。手の指とひらに違和感ある。考えがまとまらない。胃酸が逆流する。

 

口渇:喉が渇く。

便:毎日排便がある。

 

処方箋:柴胡竜骨牡蛎湯から大黄を削除+血府逐瘀湯+旋覆花代赭石湯。

 

鍼灸のツボ:合谷、太衝、血海、曲池。

 

▼李哲の説明:旋覆花代赭石湯は逆流性食道炎によく使う処方です。関連の症例が一つあるので、どうぞご参考に。

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胃酸が逆流するのは治り、血圧は160まで下がった

 

02/14/2014 

患者さんの報告:前回の鍼治療後、めまいがした。血圧は160/110 mmHg。胃酸逆流するのは治った。

 

便:小粒サイズ。

脈診:非常に弱い。

舌診:舌苔が薄い白。

眼診:肝臓の反射区が非常に大きい。

 

処方箋:既製品の真武湯+補中益気湯+五苓散。

鍼灸のツボ:三陰交、地機、陰陵泉、血海。

 

▼李哲の説明:補中益気湯の症例は、他にもあります。以下の記事、参考になると幸いです。

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03/04/2014 

患者さんの報告:昨日は目と耳が痒かった。血圧は160~170/110mmHg

睡眠:夜中に目が覚める。

便:毎日出ない。

脈診:非常に弱くて、深い。

舌診:舌の色は少し浅い、舌苔は薄い白。

 

鍼灸のツボ:合谷、三陰交、太衝、曲池、血海。

 

処方箋:患者さんはやっと煎じ薬を飲むことにしました。

柴胡 玉金 黃芩 龍骨 牡蠣 當歸 生地 丹皮 桃仁 川芎 牛膝 白朮 茯苓 陳皮 制半夏 酸棗仁 知母 炙甘草

 

生薬:竜骨の画像

生薬:竜骨の画像

煎じ薬にしてから、血圧は140/100mmHg を維持している

 

03/11/2014 

患者さんの報告:煎じ薬を飲んでから感覚は良好。血圧は140/100mmHg をキープ。右手の薬指と小指が握れない。ふとももと肩が辛い。

 

脈診:非常に弱くて、深い。

舌診:舌苔は薄い白、舌は痩せてきた。

 

処方箋:前回同様。

鍼灸のツボ:環跳、曲池、条口透承山、合谷、太衝。

 

患者さんが言うのは、「2週間の漢方を飲んでから、心身状態は非常に良いです。血圧は140/100mmHg、生徒さんを教えることができました。しばらく休んでから、また再診察に来ます。」

李哲の解釈と感想

煎じ薬は粉薬より効果が著しい

 

李宗恩博士の処方箋を見ると、最初は粉薬、最後は煎じ薬になりました。煎じ薬のとき、多少はアレンジがあるけど、もとはやはり「柴胡加竜骨牡蛎湯」+「血府逐瘀湯」+「酸棗仁湯」。

 

患者さんの変化から見ると、煎じ薬のほうが粉薬よりも効果が著しいです。

 

煎じ薬は顆粒状の漢方薬よりも効果が強い

 

漢方薬は基本的に煎じます。

粉薬にするのはあるけど、少ない。そして、漢方薬は病状に応じて粉薬、丸薬、煎じ薬にするかを決めます。だから、大昔から「葛根湯」はあるけど、「葛根散」「葛根丸」には作られてないのです。葛根湯が必要なときに、粉薬にして飲むと効果が出ないのを知っていたから。

 

今はテクノロジーの発達で、葛根湯が顆粒状の薬になりました。一般的な風邪の発熱、鼻水、咳、悪寒などには有効です。ただし、症状がひどい患者さんには即効性が出ない。これは顆粒状薬のパワーが限られているからです。詳しくは以下の記事で説明しているので、参考にしてください。

 

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高血圧症とうつ病は、鍼灸でも治せる

 

鍼灸でも高血圧を治せます。

血圧が正常値まで下がるのは人によりますが、数回で効果が分かるはず。以下の鍼治療例、参考になると幸いです。

 

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うつ病の症例ではないですが、精神病だと診断された女性を治したことはあります。以下の記事、どうぞご参考に。

 

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上記の患者さんみたいな、肥満症でうつ病・高血圧の場合、漢方薬ですら時間がかかったので、鍼治療はさらに数ヶ月もしくは1年以上かかるかも知れません。五臓六腑の慢性疾患を治すときは、持久戦に備える心がまえが必要です。

 

最強なのは、やはり鍼灸と漢方薬の併用ですね。このダブルパンチで治らない病気はありません。

*1:李宗恩博士の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。