慢性白血病の低熱、咳、倦怠感、体中が寒い症状を改善した漢方薬治療例

こんにちは。李哲です。

アメリカの中医師:李宗恩博士*1の漢方薬治療例を翻訳しました。中国語本文のリンク先は、慢性白血病 – 當張仲景遇上史丹佛

慢性白血病だと診断され、咳・呼吸困難・低熱が続くなどの症状がある男性

 

男性、44歳、中国人。

数年前、病院で「慢性白血病」だと診断され西洋薬でコントロールしたけど、1年前から異常が出始めました。

 

初診は2013.1.4です。

主訴:よく午後3~4時から低熱が起きて、全身に力が入らない。体内はすごい寒くなり、体外は熱くてイライラする。

 

毎回発作すると10日くらい続いて、夜の7~8時が頂点に達する。これが1ヶ月に1~2回発作。

 

慢性白血病の体表的な症状:低熱が続く

慢性白血病の体表的な症状:低熱が続く

 

運動して疲れたら、午後にすぐ低熱・全身の倦怠感が発作し、呼吸困難・咳がひどいそうです。痰の色は白で、顔面蒼白、唇まで白い。

 

30代からすでに白髪があり、1年前から右の眉毛が白くなりました。小さい時から耳鳴りがして、キーンとする高い音が聞こえる。

 

体に良い薬膳料理を食べると、イライラが増えるだけで、体内はまだ寒く感じます。

問診内容と処方箋

 

以下は問診内容です。

中医学の問診内容を簡略化して、素人でも分かる健康チェック表があります。自分の健康状態が知りたい人は、ぜひやってみてください。

 

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寒熱:手足は冷え性で、体は寒がり。

汗:他の人より汗かき、以前は寝汗をかくときもありました。

 

睡眠:よる11時に寝るけど、倦怠感・低熱が発作したときは寝付けられない。発作してなければ、すぐ寝られる。朝4時頃に尿意でトイレに行く、たまには夜間頻尿が5~6回もある。昼は頻尿ではない。

 

食欲:ベジタリアン。低熱・倦怠感が発作しなければ、食欲は普通にあるけど、発作したときは消化できない感じ。

 

大便:発作したときは、1日2~3回の下痢。発作してなければ、正常な大便。

 

尿:発作してなければ、1時間に1回の尿。尿には泡があり、匂いは普通。発作したときは尿がない。

 

口渇:午後は喉が渇くけど、朝は渇かない。冷たい水が飲みたいけど、飲み込むとむせるので飲めない。

 

朝たち:発作してなければ、朝は正常に朝たちがあるけど、発作したときはない。

 

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脈診:洪大有力、浮。

舌診:舌苔は白で少し乾いている。ベロは広いけど厚くない、少し痰がある。

 

処方箋:

生のトリカブト(附子) 乾姜 加工したトリカブト(附子) 生姜 石膏 炙甘草 梗米 細辛 烏薬 なつめ 党参 補骨脂 澤瀉

 

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【▲乾姜(かんきょう)の画像】

体が寒い・咳はだいぶ良くなり続く低熱も治った

 

2013.1.14 再診察

主訴:漢方薬を飲む前に風疹が出て、風疹が消えてから飲み始めました。飲んでから体内が寒いのと咳がだいぶ良くなり、低熱も消えました。朝4~5時に起きてトイレに行く、足のむくみはまだあります。

 

脈診:少し数。尺は浮。

寸脈は尺脈より大きい。

 

舌診:舌苔は白、少し乾いている。

 

処方箋:生のトリカブト(附子) 乾姜 加工したトリカブト(附子) 生姜 石膏 炙甘草 梗米 細辛 烏薬 なつめ 党参 補骨脂 澤瀉

 

烏薬の画像

烏薬の画像

夜間頻尿は減り、心臓の動悸も前より改善。患者さんの感覚はとても良い

 

2013.1.21 再診察。

主訴:感覚はとても良い。いつも発作した低熱はなくなり、寒がりは治った。下痢で便が飛び散る、お腹が張るけど痛みはない。臭いガスが出る。

 

両足のむくみは、前よりひどくなった。

夜間頻尿は一晩3回から2回に減り、たまに心臓がドキドキするのは前より改善。

 

足裏の皮がむけるのがひどくて、爪が割れている。

 

脈診:結代脈はない。数、尺浮、少し緊で有力。

舌診:舌苔は白、少し薄い。

 

処方箋:炙甘草 生姜 桂枝 人参 生地 麦門冬 麻子仁 なつめ 瓜簍実 薤白 枳実 アキョウ

 

朝鮮人参:気力を補う最強の生薬

朝鮮人参:気力を補う最強の生薬

3週間経っているけど、慢性白血病の低熱・咳・倦怠感などは発作してない

 

2013.1.28

主訴:もう3週間経っているけど、発作していない。夜間頻尿・便通は改善されお腹にガスがたまるのは減った。朝5時くらい心臓の鼓動が強く感じる、頭が腫れている感じ。手は少し冷たい。

 

脈診:少し数、浮。有力。関脈は少し高い。

舌診:舌苔は白、薄い、瘀血がある。

 

処方箋:桂枝 炙甘草 枳実 薤白 瓜簍実 生のトリカブト(附子) 白朮 乾姜 茯苓 防已 黄耆 牡丹皮 川芎

 

このままの処方箋で、しばらく様子を見るつもりです。

 

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【 ▲白朮(びゃくじゅつ):湿気を取り、脾胃を元気にする著名な生薬 】

 

李哲の解釈と感想

 

中医学の判断からすると、白血病は3つの主な症状があります。(もちろん、ほかの症状・チェック項目があり)

  1. 長期的な低熱(注意:高熱ではない)
  2. 全身の倦怠感。
  3. 体内が寒く感じる。

上記の患者さんは、2つ以外にもたくさんの症状がありました。

2週間の短い期間で、様々な症状が改善できたのは、さすがに漢方薬のプロです。

 

いまだに漢方薬では慢性的な病気、軽い病気しか治せないという見解が多いですが、それは間違っています。重症の患者さんを治した中医師は何人もいますから。以下の記事で説明しています。

 

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李宗恩博士の処方箋は、生薬を勉強した方からみると信じがたいものです。なぜなら、すごい熱い生薬(トリカブト)と熱を冷ます生薬(石膏)が一緒に入っているからです。

 

もっと不思議なのは、加工したトリカブト(炮附子)と生のトリカブト(生附子)が同時に使われています。

 

生薬に詳しい先生じゃないと、こんな処方箋が出せません。

ニハイシャ先生の真髄をもらったと言っても、過言ではないでしょう。アメリカの近所に住んでいる患者さんは、幸運だとしか言えません。

 

加工したトリカブト、生のトリカブトの簡単な区別は、過去記事で説明しているのでどうぞご参考に。

 

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慢性的な倦怠感・疲労困憊は様々な病名に当たるかも知れません。しかし、漢方医は患者さんの症状をみて治療ができます。

 

以下はもう一人の漢方医の治療例。脾臓の腫れ、倦怠感、生理が5ヶ月も来ない…を同時に治した面白い例です。読んだことがない方は、どうぞご覧ください。

 

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私は白血病の症例がないので控えます。

子供の白血病を1回だけ鍼した事があるけど、効果を感じたものの、治療が途切れました。

 

白血病の治療方法は漢方薬であろうと鍼灸であろうと、ルートは同じ。五臓六腑を強化して、詰まっているところ・足りない所を補うことで全体的に治します。関連内容は以下の記事で詳しい説明しました。

 

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白血病、西洋医学では抗がん剤+骨髄移植です。

抗がん剤が効かなかったら?

ピッタリの骨髄が見つからなかったら、どうしますか?

 

先に漢方薬・鍼灸の治療を受けてみて、なにか損をするでしょうか?

*1:李宗恩博士の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。