疲れやすい・寒がりの原因は、心臓と腎臓が弱くて、水が溜まっているからです。漢方薬を1週間飲んで、興奮剤を打ったみたいに元気になった男性の例。

【※本記事は2021-06-30更新しました】

 

こんにちは。李哲です。

アメリカの中医師:鄭智城先生*1の記事を翻訳しました。中国語本文のリンク先は、三个中医,一个有趣的案例_郑智城_新浪博客(2011-07-18 発表)

ガッチリ体型なのに、疲れやすくて唾液が多すぎて困る患者

最近治療に来た一人、見た目はガッチリしているけど脈はとても沈。ほとんど脈がなかったです。

 

私「とても疲れやすいですか?」

彼は頷きました。

 

続いて舌をみたら薄い赤。乾いて舌苔は白。

私「口は渇きますか?」

彼「渇かない。逆に唾液が多すぎて困ります。

 

▼李哲の補足説明:唾液が出すぎるのも病態ですが、出なくて口の中が乾くのも病態です。以下は唾液が少なくて困った患者の症例、参考になると幸いです。

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漢方医たちの処方がまったく異なるから、混乱した患者

以下は彼の陳述です。

彼はもともとニュージャージー州で、中医学の治療を受けました。最初の中医師の所で2ヶ月治療、効果はまあまあ良かった。残念ながらその中医師はいなくなり、もうひとりの中医師が主治医になりました。

 

もう一人の中医師は気虚だと判断して、処方も1番目の中医師とだいぶ違う。味があまりない漢方薬。しかし、1番目に処方した中医師の処方は、とても味が濃い。濃すぎて煎じた後はネバネバしていたそうです。

 

彼は自信がなくなりました。なぜ2人の処方がこんなに違うのか?そして3人目の中医師に診てもらおうとしたのです。

 

▼李哲の補足説明:中医学には「異病同治」、その真逆の「同病異治」があります。「同病異治」とは病名が同じなのに、処方が違うこと。

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漢方薬の処方がまったく違うのは、体の一部分しか見えてないからです

私は彼の陳述を聞いて、だいたい分かりました。

 

1番目の中医師はおそらく腎虚証だと判断したでしょう。処方は右帰丸など。右帰丸は地黄丸の改良バージョンで、大量の地黄に鹿角胶などを入れ、味はとても濃くて煎じた後はネバネバします。

 

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地黄(じおう):腎臓を養い、血を増やす作用がある。

2番目の中医師は気虚だと判断し、補中益気湯などを処方したでしょう。補中益気湯の味はとても薄いです。

 

私「2番めの漢方薬を飲んで、何か変わりましたか?」

彼「まだ1週間しか飲んでないです。そんなに早く変わらないでしょう。まだ感覚的には変わってないです。」

 

以上の2人の中医師の判断は、みんな間違ってないと思います。患者は腎虚証があるので、右帰丸は正しい。気虚もあるので、補中益気湯も悪くはなってない。しかし、腎虚証と気虚証はみんな表の症状で、根本的な原因ではないです。

 

▼李哲の補足説明:補中益気湯は臨床でよく使われる処方です。例えば頚椎症性神経根症。胃腸を整える漢方薬なのに、なぜ首肩の痛み・手のしびれなどに使えるのか?詳しくは以下の症例をご覧ください。

 

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疲れやすい・寒がりの原因は、心臓と腎臓が弱くて、水が溜まっているからです

彼の根本的な問題は、火が弱くて水が溢れている。分かりやすく言うと、心臓と腎臓が弱くて水の代謝がうまく行ってない。

 

彼は身体がガッチリしているけど、たくさんの水が溜まっています。同時に彼は寒がりで、冷房の部屋では必ず長袖を着る。 普段疲れやすいのも、腎虚証と冷たい水が溜まっているのが原因です。

 

▼李哲の補足説明:以下は腎虚証のいろんな症状に関する小論文。参考になると幸いです。

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漢方薬を1週間飲んで、興奮剤を打ったみたいに元気になった

彼に処方したのは附子(トリカブト),乾姜,炙甘草,白朮,茯苓,厚朴,半夏,白豆蔻,木香,木瓜。5日分。1週間後に再診察。

 

1週間後、彼は再診察に来ました。

彼が言うのは、「この1週間は、体調が良いです。まるで興奮剤を打ったみたいに元気!

 

それはそうでしょう。

体内の老廃物が減れば、身体も変わります。だから、「中医学は効き目が遅い、1週間では効果が分からない」という説は、正しくないです。

 

▼李哲の補足説明:鄭先生は様々な症例で、漢方薬は効き目が遅いという説を覆しました。以下の一つの症例、どうぞご覧ください。

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李哲の解釈と感想

処方が難しい漢方薬

漢方薬の処方は難しいですね…

症状に合っている場合は、1週間でも著しい効果が出ますが。合ってない場合は、1ヶ月飲んでも効果が分からない。

 

処方が正しいかどうかは、もちろん漢方医の腕によります。一般人は知らないと思いますが、漢方医でも2つの流派があって、もし温病派の先生だったら、いつになっても病気が治らない。特に重病の場合は、死ぬしかありません。

 

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体内を温めるのには、お灸がオススメ

鍼灸は即効性があるけど、なんでも1~2回で治るものではないので、しばらく様子を見る必要があります。慢性的な重病は、4~5回やって進歩が少ししかないかも知れません。場合によっては、持久戦が必要です。

 

上記の男性、脈診で沈。自覚症状は寒がり。喉は渇かない。これだけでも判断できますが、裏寒証です。附子(トリカブト)を使うのは当たり前。

 

鍼灸の場合は、自宅でのお灸を薦めます。関元もしくは中極穴でお灸すれば、2~3日でパワーが出るのが分かるはず。男性なら元気な朝たちがすぐ戻ります。


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むくみは脾経を強化することで治す 

体に水が溜まった場合は、基本的に脾経のツボで強化します。よく使うのは陰陵泉、地機、三陰交。中極穴と関元にも、鍼を刺す時がある。

 

陰陵泉、地機、三陰交はマッサージして、しこりがある所をグリグリ押すだけでも、体がめちゃくちゃ軽くなります。

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中医学で脾臓は『土』に属する。

水が氾濫したときは、必ず土を強化して水を制します。

 

陰陽五行論はシンプルかつ合理的思考で、病気を判断するときに、とても役に立ちます。

 

西洋医学は無限に細かく分類して分析しますが、中医学は真逆。いろんな共通点がある現象を一つにまとめて、それを「火」「土」「水」などに分類し、陰陽五行論に利用しているのです。

*1:鄭智城先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。