左肋骨下の腫れ物が3日の「五積散」で消えた例

こんにちは。李哲です。

アメリカの中医師:鄭智城先生*1の文章を翻訳しました。中国語本文のリンク先は、胰脏不明原因肿块终于治疗见效_郑智城(2012-03-14 05:49発表)

 

諸症状は良くなっているけど、左肋骨下の腫れ物だけは治らない

今年の始まりの時、一人の西洋人女性が再診察に来ました。

 

彼女の症状は、長年左肋骨下の奥部にはれものがあって、痛くもないそうです。彼女が言うのは、「何かがそのへんにあります。」

 

彼女は見た目は白人だが、完全に白人でもない。あとで知りましたが、イタリアの血が流れているそうです。

 

ベロはとても怪しく、薄い赤でたくさんの裂けた溝が見えます。そして、潤いが多い。脈診も特別で、他のところは目立たないけど、関部だけ出っ張っていたのです。

 

彼女の処方箋はいろいろ使いました。半夏瀉心湯、六君子湯、苓桂朮甘湯、五苓散、猪苓湯、四逆散、大柴胡湯、三稜、莪朮などなど。

 

「苓桂朮甘湯」はめまい、嘔吐も治せます。

以下の記事、どうぞご参考に。

 

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とにかく、考えられる処方は全部使ったけど、はれものが消えません。

幸いにも、彼女のほかの症状は改善されたので、断続的に再診察に来ています。

漢方薬を五積散に変えたら、3日で左肋骨下の腫れ物が消えた

 

今年の始まりの時、ちょうど五積散を知ったばかり。

防風通聖散と真逆の処方で、温めるほうが多いです。

 

清朝の名医、喻嘉言が『医門法律』で書いたのは、「能治多病,粗工咸楽用之」。

(李哲の直訳:たくさんの病気を治せるので、面倒くさがりの先生・病状がよく分からない先生は使いたがる)

 

私が思ったのは、自分はまだ未熟な先生だし、こんな良い処方だったら使ってみよう。

そして、彼女の関部の脈が鬱結したのが著しいので、この処方は合っているかも。

 

当時、彼女に処方したのは3日分。

 

3ヶ月後、彼女はまた来ました。

「前回の処方はどうですか?」と聞いたら、彼女が言うのは「良いです。腫れ物が消えました。でも、最近はまた出てきたみたいです。」

 

私は大喜び。

「本当に?効果は何日くらい続きましたか?」

「だいたい1ヶ月続きました。」

 

脈診してみたら、関部の脈はほぼ平。

以前の出っ張っている脈と完全に違う。

これは確実に効果があることですね。

 

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【▲ 五積散中の生薬:甘草 】

 

五積散の機序を分析してみる

 

五積散で効果が出たのは、皮膚の穴を開けるからです。

以前の処方は、全部体の中だけ考えていました。

しかも、ある部分だけを考える。

水、もしくは痰、気、血など。

 

五積散はすべての老廃物をまとめて出す処方箋。同時に皮膚の穴を開ける漢方薬です。

 

万病は風邪(ふうじゃ)から来ると言いますね。

ニハイシャ先生はもっとすごい言葉がありますが、「すべての癌のもとは風邪である!」

 

全面的に解決する五積散のおかげて、彼女の病気もやっと効果が見れました。幸いのことです。

 

五積散の中にある生薬:当帰(とうき)の画像

五積散の中にある生薬:当帰(とうき)の画像

李哲の解釈

五積散は日本でも売っている

 

五積散(ごせきさん)は、15~18種類の生薬を入れているみたいですね。数打てば当たるだろうの感じ。

 

『傷寒雑病論』の処方箋の構成を見ると、簡単なやつが多いです。普通は5~6種類の生薬で組み合わせ。多くても10種類くらいの生薬でしょうか。

 

18種類というのは、さすがに『傷寒雑病論』のスタイルではないです。

 

ちなみに、日本で五積散が売っています。

興味がある方は、どうぞ調べてみてください。

すべての治療は、一か八かの問題

 

左肋骨下の脾臓あたりですが、上記の処方箋を見ると当てはまるのがないです。だから、いろいろ処方箋を変えても効果がなかったでしょう。

 

漢方薬って、本当に判断が難しいです。 

イチかバチかの問題なので、処方があっていればすぐ効果が出る。処方があってなかったら、何週間飲んでも効きません。

 

治療って、そんなものではないでしょうか?

すべての治療は、結果的に2択のみです。

  • 効果がある
  • 効果がない

この道理をわかれば、皆さんは西洋医学の有効率何%の話に騙されないでしょう。

 

有効率60%だから、あなたが使っても60%効くと思いますか?

 

結果的には100%効く、もしくは100%効かない。

60%の効果があるなんて、ありえません。

 

以下の記事では、私の勉強経歴を振り返りながら、漢方薬・鍼灸に対する認識を書きました。漢方薬はもちろん、鍼灸もツボが間違ったりすると、効果が出ません。

 

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鍼治療の場合は、三焦経の流れを良くすることで治せる

 

上記の彼女の状態だと、西洋医学の病名:脾腫が考えられます。

鍼灸治療では、手足の三焦経(さんしょうけい)を考えますね。

 

たとえば手少陽三焦経のの外関、支溝。

足少陽三焦経の陽陵泉、絶骨、光明。

あとは、肋骨あたりの日月・章門など。

 

腫れ物ではないですが、わき腹の痛みを治した事があるので、参考にしてください。

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li-hari.hatenablog.com

 

わき腹、肋骨の痛みであろう、何かの腫れ物であろう、鍼灸治療ではそのへんを流れている経絡を見て、相応のツボを選択し手技を考えます。

 

効果があるかないかは、鍼を3~4回してみれば分かりますね。

*1:鄭智城先生の紹介は、オススメの漢方医・鍼灸医(海外) をご覧ください。