- 人工知能(AI)が、鍼灸師の代わりになるのか?
- 鍼灸治療が効くのは、「ツボ」に施術をするから
- 人工知能(AI)が鍼治療するための必須条件
- 人工知能(AI)でリストラされたら、鍼灸師より西洋医学の仕事が先
- まとめ:人工知能(AI)が鍼治療できるのは、まだ300年以後のこと!
人工知能(AI)が、鍼灸師の代わりになるのか?
こんにちは。李哲です。
今はスマホに人工知能(AI)チップが入り、家電製品にも人工知能(AI)が導入されつつあります。数年後には当たり前のように、全ての商品・サービスに入るでしょう。
1年前、囲碁で「地球最強」だと言われた選手が、グーグルのAI『AlphaGo』に負けました。AIは人間みたいな思考はできないけど、ビックデータで最適の選択肢ができるのが強みだと思います。
あとは、人間みたいに気分に左右されないのでミスしない。電力供給が落ちない限り作動する。人間は腹ペコだと脳の働きが遅くなり、ミスも増えます。
囲碁は最強の頭脳運動だと言われていますが、囲碁で負けたらほかの業界はどうなるだろう?と私は思ったことがありました。
たとえば医療現場。
西洋医学では、すでに手術支援ロボットがあります。
まあ、今のところは内臓が陰部から垂れて出てきたり、トラブルだらけですけど…詳しいのは過去記事をご覧ください。
ロボット鍼灸師が現れる時代が来るのか?
私の考え方は、まだ無理。
以下でその理由を述べようと思います。
鍼灸治療が効くのは、「ツボ」に施術をするから
ビッグデータで針灸の仕組みが分かって、鍼灸師みたいに鍼治療ができるのか?
これを討論する前に、鍼治療は「なぜ効くのか?」を分析する必要があります。
鍼治療は経絡とツボをもとにしているので、一番最初にツボを話さないといけません。以下では、鍼治療の効果を出すためのツボに関して討論します。
1.施術には、ツボ(正穴)の選別が必要
体全身は経絡が隙間なく包んでいて、ツボは経絡の要塞です。
大事な要塞を制覇すれば、全部の経絡を制覇できて、体の運営状況をコントロールできる。これは戦争でも同じ原理です。
ツボは大昔から記録されていて、概ね365個があると言われています。
これは経絡の上にある、正式に記載されているもので、「正穴」だとも言います。
ちなみに、一般的に見かけるツボ人形にプリンターされているのは、「正穴」です。
2.通常の「正穴」以外に、また「奇穴」がある
「奇穴」というのは、正穴以外に後世の鍼灸医たちが見つけたツボ。
経絡に属しているツボではないので、正穴みたいに繋がっている経絡を治すことができません。
ただし、奇穴は特定な病気に効果バツグンです。
例えば胆嚢点、盲腸(虫垂)点など、その効果は一撃必殺。
刺した瞬間から、お腹の痛みが緩和し始めます。
以下は一つの鍼治療例。
3.病状によっては、ツボの位置が移動する
一般的に正穴・奇穴は、位置が決まっています。
ただし、病状によってはツボが移転する時がある。
正穴・奇穴を治療して効果がない場合、経絡にそって圧痛点を探す方法があります。圧痛点を探してそこに針をすると、予想外の効果が出るというケースは多々あります。
これは鍼灸師の指で探るので、鍼灸師の指の感覚が鈍いとダメですね。
3.ツボを決めたあとは、適切な鍼の道具を選ぶ
基本的な鍼は2種類あります。
刺す用と刺絡用。
どちらにせよ、太さ・長さを選ぶ必要があります。
例えば細い人には、あまり太い鍼を使わない。
キン肉マン、太っている人には、太い針を使う。
どの鍼を使って良いかは、鍼灸医の経験によります。
もっとも大事なのは、実際に刺してみてから決めることです。
痩せ型の人なのに、太い鍼じゃないと気が動かない。
このような例外があるから。
臨床での患者さんの反応、報告からどんな鍼が良いかを判断します。
刺絡療法に関しては、過去記事を参照してください。
4.ツボは時間帯によっても、効果が変わる
鍼灸には五兪穴(井栄兪経合)があり、陰陽五行説にも対応。
1日も陰陽五行説で『木火土金水』に分かれているので、五兪穴とペアになります。
たとえば夜中に治療に来た場合、「井穴」を使う。
午前中は「栄穴」を使う。
お昼ごろに来たときは、「兪穴」を使います。
5.ツボは刺すだけでは効果がない、得気(とっき)が必要
『黄帝内経・九針十二原』の原文は、「刺之要、気至而有効」。
直訳すると針治療を有効にする要点は、気が至る・気が来ること。
気が至るのを、得気(とっき)だと言います。
「得気(とっき)」は鍼灸の特有な現象で、鍼した所にしびれ、電気が走る感じ、重くなる、熱くなる、冷たくなるなどの感覚。具体的にどんな感覚かは、患者さんしか分かりません。
鍼灸医は患者さんの感覚がわからないけど、指の感覚で気を探知できます。
赤ちゃん・意識不明状態の人は話せないので、鍼灸医が自分で得気(とっき)しているかどうかを判断するしかないです。
この時、頼るのは鍼灸師の指先の感覚。
鍼灸治療の特徴に関しては、もう一つ過去記事が参考になるのでご覧ください。
人工知能(AI)が鍼治療するための必須条件
以上では鍼治療の経絡・ツボ、施術の道具などを説明しました。
人工知能がクリアしないといけないのは、最低でも以下のとおりです。
①鍼治療の様々な原理(治療法則)を熟練に操り、いろんな組み合わせで最大の効果を出す。
②患者さんの症状によって、ツボを選別する。
ツボは3種類あるので、臨機応変が必要。
③適切な道具を選ぶ。
患者さんの施術後の反応によって、道具を換える必要がある。
④人間の指みたいに、繊細な感覚センサが必要。
特に④は、今の時代というか100年後にも実現が難しいと思います。
人間の触る感覚で、一番繊細なのは指です。
指の感覚センサのマネができるなら、人間も作れると思いますね。
人工知能(AI)でリストラされたら、鍼灸師より西洋医学の仕事が先
余談話ですが、ついでに西洋医学を話します。
西洋医学は今のところ、まだマルチ思考になっていません。
たとえば、肺炎の治療にはこの薬。
あの薬は〇〇病に適している。
ほとんど、1対1の関係です。
漢方薬みたいに、〇〇病も治せて▲▲病も治せるのはありません。
漢方薬の異病同治の例としては、以下の記事をご覧ください。
鍼灸のツボも、様々な効果があります。
一つのツボがたくさんの効能を持っているのは、内臓とつながり、ほかの経絡ともつながっているからです。
以下、皆さんがよく知っている「三陰交」を例としてあげます。
三陰交が治せる主な病気:
- すべての婦人科疾患(生理不順、不妊症、子宮筋腫、チョコレート嚢腫、子宮がん、子宮頸がん、生理痛、突然の閉経、難産、産後うつ病…)
- 糖尿病
- 腎臓のすべての病気(腎炎、腎盂炎、腎臓がん…)
- ED(ぼっき不全)
- 早漏(そうろう)
- 寝違いしやすい
- お腹が張る
- 不眠症
- 腰の骨が痛い
- 疝気(腸、睾丸がそけい部に垂れて挟まれ、痛みが生じる病気)
- 三叉神経痛
- すべての皮膚病(湿疹、痒み、乾癬、アトピー肌、ニキビ…)
- 梅核気(慢性的な喉の炎症)
- 足の踵の痛み
- 腎臓の強烈な痛み
良心的な話を聞かせてください。
以上の病名、病院の治療薬だったら何種類で足りますか?
ツボは一つだけで全部治せるのです。
西洋医学は1対1の関係が多いので、ビッグデータがあれば様々な分析ができます。
血液検査・尿検査・MRI画像診断などの結果で、どんな病気の確率が高いのか?臨床検証データに基づいて、どの薬が最適なのか?どのような手術をすれば、一番リスクが少ないのか?など。
人工知能(AI)が病院の先生になるのは、十分ありえる話です。
いまの病院の先生に残るのは、「ふれあい」と「癒し」?
いまだって、西洋医学の先生にできるのは、これだけじゃないですか?
これ以外に、なにが「治癒」できますか?
まとめ:人工知能(AI)が鍼治療できるのは、まだ300年以後のこと!
今のところ、テクノロジーでは気の正体が分からない、ツボの選択ができない。最も実現が難しいのは、人間の指先の感覚を真似すること。
以上で説明したツボは、施術のときに使うものです。
ほかにまだ説明してないのは、施術する前の診断。
患者の顔色、声、におい、脈診、触診、問診を通じて、どの内臓・経絡に問題であるのかを判断。その後に、ツボの選択をするのです。
ということは、鍼灸医は五感中の4感(嗅覚、視覚、触覚、聴覚)を利用し、総合的に診断します。単なる情報では、正確な判断に欠ける時があるから。
指の繊細な感覚も再生できないのに、
人間の五感を真似するのは更に無理でしょう。
だから、私は100年経っても人工知能(AI)は鍼治療ができないと言ったのです。
ただし、テクノロジーが発展するのが日進月歩で、実現できないと断言はできないです。300年後には実現できるかも知れません。
でも、この記事を読んだ人は、その日を見ることができませんね(笑)