溺れ死んだ人を、鍼で緊急救命【翻訳文】

こんにちは。李哲です。

今日は中国・周德宜先生の鍼治療例を翻訳しました。

 

溺れた子供の緊急救命の症例です。

 

中国語本文のリンク先は、

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翻訳文

曹さん、男の子、12歳、学生。

初診は1979年7月23日。

 

川で遊んだとき溺れ、40分後に他の人に発見されました。当時の症状は呼吸が止まって、四肢が氷みたいに冷たい。皮ふは紫色になり、口から白い泡が出て顔色は黒い、ベロが外に出てました。

 

お腹は大きく腫れて、体はまだ柔らかい。心臓の動きはまだある。

 

治療:

①患者さんを通気性がよい所に移動してうつ伏せを取り、腰を高くして口を開けて、肺と胃の中の水が出るようにしました。

 

②会陰、水溝(人中穴)、少商に鍼治療。

会陰は5分間、水溝(人中穴)は2分間、少商は1分間の施術。

みんな素早く刺して、大きく回して瀉法を行いました。

 

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人中(別名:水溝)。緊急救命のときに使うツボ。意識を戻す作用がある。

 

③刺絡:三稜鍼で中衝穴からなるべく血を出す。

 

④細辛、半夏を各0.5gを粉にして、鼻から吹き入れてくしゃみが出るようにしました。

 

治療して1分くらい経ったら、患者さんは長い息ができて、目玉が動くようになり、意識が戻りました。

 

治療後も続けて関元と腎兪を温めることで、寒気と水を出すようにしました。

 

以上の情報は、『王振琴、周德宜運用鍼灸術治療急症経験挙隅』より引用

『中国鍼灸』(雑誌)1999,(01)、32-34に載せています。

李哲の感想:

先にツボの説明をします。

この人中穴は唇と鼻の間にあって、爪で強く押すと意識を戻す作用がある

 

普段は脳卒中・熱中症などで倒れた時によく使われます。覚えておくと、ある日他人を助けられるかも知れません。

 

以前、ニハイシャ先生の師匠:周左宇先生も溺れ死んだ軍人たちを救ったことがあります。

会陰穴:溺れ死んだ人を救えるツボ(2018-02-27更新)

 

まさか、ほかの鍼灸医の例を見るとは思わなかったです。

 

世の中にはすごい鍼灸医が、たくさんいる事がわかりました。ネットがあるから、その鍼灸医たちの治療例が無料で見られて、良い勉強になりますね。

 

よく見たら、溺れ死んだ人を救うのは、他にも方法がありました。以下は古文の引用。

 

「曲骨。卒死、针一寸、补之。溺死者、令人倒驮出水、针補、尿屎出则活。余不可针」

   明朝・高武の『针灸聚英』より

 

「凡溺死、一宿尚可救、解死人衣、灸脐中即活」

   宋朝の名医:王执中が書いた『鍼灸資生経』より

 

これで分かりますが、会陰穴以外に曲骨も治療できる。へそにお灸するのは、一晩ならまだ救えられると書いてあります。

 

昔の鍼灸医たちのおかげで、助かった人たちは少なくなかったでしょう。

 

上記の男の子は、まだ心臓が完全に止まってない。体が硬直してないのが幸いのこと。もし死後硬直、心臓が完全に止まって体が全部冷たくなったら、そうとう厳しいです。

 

心肺停止状態だと西洋医学では、ほとんど救えません。しかし、心臓が止まっても心臓のあたりに多少の温度があれば、チャンスはまだあります。諦めないで1回は鍼で賭けるべきです。

 

緊急救命では西洋医学の心臓マッサージ、蘇生法、投薬治療など使うのも良いと思います。

 

気管切開で損傷が起きるか、心臓マッサージで肋骨が折れるか、薬の副作用が強いとか、もうどうでも良い。とりあえず救って来られるなら、なんでも良いじゃないですか?

 

個人的に、内科の病気治療で使う西洋薬は反対していますが、このような緊急救命で西洋医学は役に立つと思います。

 

いつか西洋医学の救急隊員も、簡単なツボを覚えて針を携帯すれば、溺れて死ぬ人が減るでしょう。夢かも知れないけど、そうなることを祈ります。