腹水、むくみ、内臓痛、肝臓の腫れなどは改善したけど、最終期が来た:末期乳がんの鍼治療例(4/4)

【※本記事は2019-07-10更新しました】

 

結果的には末期がんには勝てなかったけど、患者さんの諸症状の緩和治療では役に立ったと個人的に思います。

 

心痛い治療例ですが最後まで記録し、誰かの役に立つ情報になることを願います。

 

いろいろ感想の情報など提供してくれた彼女に、心からお礼を申し上げます。

 

 

 内臓痛・肝臓の腫れが消えたけど、食欲不振はまだ完全に戻ってない

 

こんにちは。李哲です。

今日は最後の記録、最初の1は以下をご覧ください。

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li-hari.hatenablog.com

 

2017年4月8日。

内臓痛と肝臓の腫れは消えました。

食欲は湧いてきたけど、まだ1人前は食べられない。

 

体重が落ちて、足の筋肉が落ちて走れない。

心臓喘息でハアハアするのもなくなりました。

 

触診では、中脘穴周辺の腫瘍は大きさが変わってない。少し押すと水の音が聞こえる。

 

彼女が言うのは、「便通とともにおならが出る。仕事中もおならが出て困った」

前より痩せて正常な体重になったから、彼女は喜んでました。

 

最近は体調も良いけど、「いつかまたガクッと倒れるのではないか?」と不安もあり、調子に乗れないそうです。

 

彼女は一つ面白い症状を話しました。

「この前の夜中、ものすごくお腹が空いて、食べたくて仕方なかったけど、朝まで我慢して寝てた。」

 

この話を聞いて、内臓の陽気が回り始めた事を確認できました。

重症の癌患者が、夜中にお腹が空いてくるのは、とても良い兆候です。

 

中医学の理論を説明しにくいので、これは彼女には詳しく説明してない。ただ良い事だとは伝えています。

 


 

2017年4月12日。

心臓喘息でハアハア、息切れするのは治りました。

内臓痛もなく、食べる量が安定しています。

お腹の触診では、腫瘍がある所は冷たい。へその下は暖かい。

 

腫瘍はイメージ的に縮小若しくは移動している。

以下の図面で説明します。

 

元の場所

↓↓↓


 

移動した後のイメージ

↓↓↓

移動した後のイメージ

腫瘍が左に傾いているので、胃を圧迫するのが少ない。

 

前回彼女は外食した時、わりと1人前まで食べられたけど、その後はグッタリになったそうです。

 

帰りに彼女は質問がありました。

「今年まで大丈夫ですかね?」

 

私は答えました。

「食欲など安定しているので全然持つでしょう」


励みor余命宣告。

私は励む方を選びます。

 

ほかの先生も、末期がん治療で悩んだことがあります。

たとえば抗がん剤をすすめる、それはやむを得ない選択でした。

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li-hari.hatenablog.com

 


 

2017年4月15日。

調子は良い。

へそ上の腫瘍を触ってみたら、直径が減ったような感じ。強く押すと彼女は「気持ち悪くなる」と言ってました。

 

脈診では、両手の寸関部は沈細。少し速い。

彼女が言うのは、普通に歩く分には問題ないけど走れない。

 


 

2017年4月19日。

調子は良い。

1回だけ夕食を食べ過ぎて、喉まで詰まった。

その夜は何回も下痢をして、すごく臭い便が出た。翌日には下痢もなくてスッキリ。

 

腹水でお腹がバスケットボールみたいに腫れて、胸水貯留もあると言われた

 

2017年4月22日。

調子は良い。

食べる量は安定している。

昨日だけ心臓喘息でハアハア、息切れした。

 

彼女が言うのは、「最近は体調が悪いと、なぜか体に悪いスイーツが食べたくなりますね」

 

私はビックリして、彼女に警告しました。

「消化系がやられるので、なるべく止めてください」

 

彼女は抗生物質1本で、命を落としそうになりました。スイーツなど食べるのは危ないです。

 

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重病のがん患者には食事が大事。人工的な甘い物はダメです。

 

今日の鍼は置鍼の間、ずっとお腹がゴロゴロ鳴っていました。

途中で針を回したあとは、落ち着いて鳴っていない。

 

帰りに彼女が言うのは、「来週新しい病院で検査をします。病院からは一番安い女性ホルモン剤をもらったけど飲んではない。もし数値が良くなったら、病院の先生はきっと女性ホルモン剤が効いたと言うでしょう。

 

女性ホルモン剤の副作用は、たくさんあります。その一つが骨粗しょう症

 

li-hari.hatenablog.com

 


 

2017年4月26日。

病院のレントゲンでは、胸水貯留だと言われたそうです。

仰向けになると胸水が腹部に浸透し、お腹が少し盛り上がる。

 

胸水があるので走れない。ハアハアする(息切れ)
病院は利尿剤を処方したそうです。でも、彼女は「飲まないで針で治せますか?」と私に質問しました。

 

私は彼女に説明しましたが、「確実に治るとは言えないけどやってみます!」

 

お腹をみたら、バスケットボールみたいに腫れて硬い。

中には水だらけです。

 

両足は前回まで左足だけだったけど、今日見たら右足も全体的にむくんでいる。水が貯まるのは予想外に速かったです。

 

今日は胸水を尿から出すように、ツボを強化。

水分.水道.陰陵泉.地機.三陰交.太谿など。

 

水分には丸をつけて、「帰ったらここにもお灸をして下さい!」と教えました。

 

帰りに彼女は、もう一つお知らせがありました。

病院の検査では、彼女の腫瘍マーカはストップ状態。若しくは少し減っている。以前から気になった白血球数が上がって、 病院の先生は「女性ホルモン剤が効いてるね!」と言ったそうです。

 

病院の先生は知らないでしょう。

彼女は女性ホルモン剤は飲んではないのです。

 

腹水・むくみが少し減っているけど、楽観的ではない状況

 

2017年4月28日。

食べる量はまだ1人前にはなってない。

前回の針したあと尿の出が良くなって、お腹と足のむくみが少し消えた。

 

今日仰向けで腹診してみたら、少し凹んでいる。前回はでかいボールが入ったようだったけど。

 

まだまだ水があるので、尿の出を強化する必要がある。水分.水道.陰陵泉などのツボが必要です。

 

今日も鍼した直後に、すぐ尿がたくさん出たそうです。

 

むくみに対して、鍼治療は非常に有効です。

一つの治療例があるので、参考にして下さい。

 

li-hari.hatenablog.com

 


 

2017年4月29日。

前回の鍼した後に、尿がたくさん出てむくみが減り、右くるぶしが見えてきた。

左足首のくるぶしは、まだはっきり見えない。つまり、まだむくみがある。

 

腹診してみたら、腹部のはりはあるけど、前より減っている感じ。

 

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2017年5月17日。

彼女が言うのは、水がたまりお腹の張りで辛くて、病院からもらった利尿剤を3日飲んで少し楽になったそうです。


私が見たら、左のくるぶしは浮腫で見えない。押すとふくらはぎは硬い、押しても圧痕がすぐ取れない。右のくるぶしはまだ大丈夫でした。

 

今日も背中の背兪穴を刺しました。

肺兪、心兪、膈兪、肝兪、腎兪、京門など。

内臓を強化して、横隔膜上の水を下に降ろす為に。

 

その後は、通常の仰向けで、いつもの鍼。

針を取る時、彼女が言うのは、「お腹を下しそう。すぐトイレに行きたい。」

 

トイレから出て来て、彼女はまた息が苦しそうに、ハアハアしていました。
彼女が言うのは、「体調が悪いのは、もしかして利尿剤を3日も飲んだからかな?」 


私は答えました。

「利尿剤は特に腎臓に悪いです。

一時的に胸水は減るけど、また戻ってきます。

以前、教えたツボにたくさんお灸をしてみて下さい」

 

あと、彼女は漢方を飲むと言うので、漢方薬で腹水が減るのを期待しています。

 

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彼女が言うのは、「今日針をした後、トイレに行ってきたら、すぐむくみが減ったのが分かります」

 

効果がすぐ出てきた良かったけど、私の心はまだ重い石に引かれました。水を早く出さないと!

 

あとは心臓痛。ハアハアする。ご飯が食べられない。尿が出にくい。。。も解決しないと!

 

状況は本当に楽観的ではないです。

 

彼女は最初治療に来た時、すでに肺と膵臓と胃に転移が見つかっている。その後、また肝臓にも影が見えると言われました。


どのように食欲を維持して、胸水を出すのか、困難重々な道です。

 

心臓の痛み、ご飯が食べられないのが再発

 

2017年5月20日。

2日前の木曜日、とても調子が悪くて1日休んだ。

昼間は尿がチョロチョロしか出ない。

夜は割りとたくさん尿が出る。

 

今日私が見たら、左足のむくみは減って、前のゴムみたいな硬さではない。柔らかくなっていました。ただし、心臓喘息みたいに彼女はまだハアハア、息切れしてきました。

 

帰りに彼女が言うのは、

今回は3日の利尿剤にやられ、前回抗生物質を使ったのと同じ症状が出ました。心臓痛.ハアハアする.ご飯が食べられない.夜中の3時に嘔吐.水様便(下痢)。

 

もう二度とやるか!

 


 

2017年5月24日。

前回の針、響きが強すぎたせいか、とてもグッタリして2~3日具合が悪かった。

 

食欲不振で今はスイカしか食べられない。

お灸を毎朝お腹にしているけど、なぜか8個目になると腹痛で下痢になる。

 

漢方薬を飲んでいるけど、尿から出ないで大便から出ている感じだと言ってました。

 

私は彼女に説明しましたが、「肺の水だから大腸から出るほうが多いかも。お灸をすると内臓が温まるので、8個までやった時なかの水が動いて大腸から水として出る。つまり、水様便(下痢)。しばらく出たら水様便は治ると思います」

 

彼女は今日病院の検査を受けた結果、胸水は増加してない。1ヶ月前と同じ。

腫瘍マーカーは、20くらい増えているけど、彼女はほったらかすと言ってました。

 

今日刺したツボは、だいたい同じ。

ただし、今回はなるべく弱めに響かせました。

 

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帰りに彼女が言うのは、「7月から仕事を辞めることにしました。鍼はできる限り通います。寝たきりで来れなくなったら、またメールします」


平然と話している彼女を見て、私の心はとても重かったです。

 

しばらくして、私は彼女に話しました。

「食欲が回復すれば大丈夫です」

 

私が思ったのは、この1ヶ月で胸水も増えてないし、食欲さえ戻ればまだチャンスがある。

 

彼女は鍼治療に来た時、すでにあちこち転移して、楽観的な状況ではなかったです。

 

途中で黄疸の為に使った抗生物質1本で、命を落としそうになり。

今度は3日の利尿剤にやられ、また危険な状況に落ちました。

 

今回も危険な状況から逃れられるのか。

私も分かりません。

 


 

がん治療経過の記事を書くのは、末期がんが治ったと言うのではありません。

 

経過観察記録で、事実を伝えるだけ。

治療経過の様々な変化を見て、どう思うかは皆さんの自由です。


鍼は著しい効果があるけど、どんな重病人でも治す神様ではない。

 

今後はどうなるか分からないけど、私は必ず全力であらゆる方法を考えて治療します。

 

患者さんの今まで鍼治療した感想

 

2017年5月27日。

今日入ってきたら、まだ少しハアハアしてました。

顔色は少し良くなっていました。

 

ただし全体的に痩せている。特に顔。

これは末期癌でよく見かける、悪液質の特徴です。

 

中医学でいうと消化系(脾臓と胃)が弱いから、筋肉を失います。


私が聞いたら、食べる量は半人前。

食欲はあるけど、腫瘍が胃を圧迫しているので、たくさんは食べられない。

 

肝心の胸水(横隔膜の所)は、あまり減ってない。仰向けになった時、お腹が少し盛り上がって、押してみたら痛がっていました。

 

ふくらはぎを見た限りでは、むくみは増加してない。前回と同じくらい。

お灸はやはり8個目になると、ギュルギュルお腹が鳴ってその後は下痢になる。水が便から出る感じ。

 

昼の尿の出が悪くて、チョロチョロしか出ない。夜は割りと出るそうです。

「昼まで尿がちゃんと出ればいいのに」と彼女は言ってました。

 

今日刺したツボは、ほぼ同じ。

今日は前回より、キツく刺しました。

そして、途中で1回鍼を回して響きを作る。彼女が我慢できる範囲で。

 


 

帰りに彼女はいろいろ話してました。

以下は彼女の話した、だいたいの内容。

「自分は胸水もできて、お腹にも水が溜まっている。もう末期の末期の癌だけど、胸水から来る圧迫でハアハアする以外、特に痛みもなくご飯も食べられる。他の人みたいに、副作用で間質肺炎になったりしていない。

 

病院の先生は、胸水を抜く手術を勧めたり、西洋薬を勧めたりするけど一切断った。西洋薬をよく調べているので、副作用をよく知っているから。

抗がん剤の副作用で、顎の骨もダメになった人がいる。

治療している人たち、あんなに苦しんでいるのに、自分は逆に元気とも言える。

 

自分もブログを書いて情報発信しようかなと思った。

西洋医学の治療無しで、末期がん患者の自分がどう死ぬかを見てみたい!」

 

やはり、最終期が来たのか…

 

2017年5月31日。

彼女の報告:

この2日はすごく調子が悪い。寝たきり状態で、今日やっと出かけられた。

 

今日は鍼灸院まで来るのが精いっぱい。 

息はハアハアする。

お腹の張りがひどい。

前までは夜中に出た尿が、今は夜中でも出ない。

昼は更に尿が出ないから、腹水でお腹はパンパン腫れてました。

 

やっと出かけられたので、彼女は「今日は弱めでお願いします」と言ってました。

 

仰向けで30分置鍼したけど、彼女が言うのは、やはり15分くらいしか我慢できない。途中で一回鍼を回すと、気が流れたせいか背中が辛くなる。

 

次回は仰向けとうつ伏せ両方、15分ずつやるつもりです。

 

今日は帰り、彼女の顔色は少し良くなった感じ。

彼女が言うのは、2日もちゃんと食べられてないので、今日は帰ったら栄養があるものを食べます。

 

私は彼女に山芋類を勧めました。

 


 

2017年6月。

その後、彼女は体調不良で来れなくなりました。

彼女が言った「最後」が来たたかも知れません。

 

長い間の治療でした。

患者さんからいろんな話を聞いて、一緒に頑張って山を乗り越え。体調が良くなって、希望が見えたと思いましたが。

 

必死に治療したのにも関わらず、徐々に患者さんが衰弱して行くのを見るしかなかった。いまは複雑な気持ちです。。。

 

この連載記事は、今回で終了します。

長い間見てくれて、ありがとうございました。

 

(おわり)