ダンピング症候群、低血糖症状を1週間で改善した漢方薬治療例etc.

【※本記事は2019-05-03更新しました】

 

こんにちは。李哲です。

今日はニハイシャ先生の弟子:楊貞(やんじぇん)先生の治療例を翻訳しました。全文が長いので3回に分けて書きます。 

 

ダンピング症候群、低血糖症状、心不全の動悸、高血圧症、慢性気管支炎の咳と痰、夜間頻尿、頭痛…様々な治療例が書かれています。

 

中国語本文のリンク先はこちら

  

 

楊貞先生の簡単な紹介

 

楊貞(やんじぇん)先生はもともと、中国で20年以上の西洋医学の先生をやってました。縁があって、ニハイシャ先生の中医学を学び、ニハイシャ先生の診療所で何年も研修。

 

楊貞(やんじぇん)先生は今、河南省通許県人民医院で、数百人の西洋医学の主治医たちに中医学を教えています。

 

通許県人民医院は、ベッド数1200人の大型病院。

西洋医学の治療効果が低くて院長先生が頭を抱えたところ、知人が楊貞先生を紹介してくれました。院長先生は半信半疑の気持ちで、とりあえず30人の主治医を選んで、楊貞先生のもとで中医学を勉強させました。

 

そしたら、研修わずか3ヶ月の間に、今まで治せなかった様々な病気が治り、主治医たちも患者さんたちも大喜び。

 

院長先生は治療効果にすごい喜んで、さらに100人の主治医を研修に行かせました。

 

それだけではなくて、病院の看護師・主治医全員に中医学を勉強させるように指示を出し、政府の力を借りて新しい病棟と中医学の研修基地を作り、ニハイシャ先生の中医学を普及しようとしています。

 

研修基地の開幕式にはニハイシャ先生の弟子、アメリカの開業医:李宗恩博士を特別に招待して、主治医たちに3時間を講演会をしました。

 

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真ん中の人が李宗恩博士。

 

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中国政府は今中医学の普及に力を入れているので、これも一つの起爆剤になるでしょう。

 

楊貞先生の努力で、もっとたくさんの患者さんが救われ、本物の中医学が広がる事を願います。

 

ニュースの具体的な内容・画像は、以下(中国語)をご覧ください。楊貞先生と李宗恩博士の画像も、以下のサイトから借りています。

西醫轉中醫 蛻變的開始 – 當張仲景遇上史丹佛

 

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倪海厦(ニハイシャ)先生の有名な弟子:楊貞先生の画像。

 

治療例1:胃出血・ダンピング症候群(低血糖症状)・頻尿・冷え症

 

男性、50歳、痩せ型。

2001年胃の出血で大部分の胃を切除しました。

しかし、一回目の手術はミスがあり、2回めの手術で穴を埋めたのです。

 

手術後、彼の体調は一直線で落ちました。

彼は以前、特殊部隊の一員で、とても良い体と意志力があります。

ただ、食事が不規則で胃の出血が起きたのです。当時は手術しなくても大丈夫でした、何故かと言うと出血は止まっていたから。

 

症状:すぐお腹が空く。

お腹が空いた時に、すぐ食べないと動悸・冷や汗をかくなどのダンピング症候群(低血糖症状)が起きます。

 

食欲はまだ良い。でも、食べる量がとても少ないです。

 

頻尿。

尿意があったとき、1秒も待てない。

1回の尿量は少なくて、小便の痛みはない(西洋医学の検査では前立腺肥大、手術を勧めたけど彼は拒否しました。)

 

性機能は完全になくなり、朝たちもなく、会陰部は筋肉が垂れて収縮力もない。

 

睡眠は良いけど、体力が悪くて倦怠感がある。

体は寒がりではない、足が冷える。

肩の上からは熱さを感じて、汗かき。寝汗はかかない。

 

咽は乾いて温かい飲み物をほしがる。

大便は毎日1回。

尿色は透明。

 

脈は洪、有力。

舌苔は薄い黄色、厚くて乾いている。

 

診断:上熱下寒。腎臓の陽が足りない。手術で封蔵された陽気を失っている。

 

治療:(単位は銭)

石膏4両。知母3,甘草3、加工したトリカブト5,細辛3,烏薬6、◯◯3、◯◯5、◯◯3,◯◯5、◯◯3、◯◯3、川芎3、桃仁3、◯◯3、茯苓5、白朮3、陽起石3、莵絲子3、ハゲキテン3。

 

9月18日: 漢方を1週間飲んで、お腹が空いても耐えられる。尿量は増えて、頻尿は減り、体力がよくなりました。足はまだ冷たい。

 

患者さんが言うのは「会陰部から内側に卵サイズの腫瘍が、縮まってきました」

(初診の時は言ってなかった症状)。

局部には熱い寒い感覚はなし、両側の鼠径部には落花生サイズのリンパ節腫脹がある。

 

診断:進歩している。

治療:加工したトリカブトを7に増量。新しく◯◯3,◯◯5、◯◯1両を追加。ほかは変化なし。

 

1週間後、患者さんの症状は明らかに改善しました。

もうお腹が空いても耐えられる、お腹が空いて動悸・冷や汗をかくのは消失。

 

尿は増えて、尿意があっても5分間は我慢できる。毎回の尿量は増えています。

 

持続的に服用して、処方箋も変えなかったです。

1ヶ月後、患者さんが言うのは、腫瘍は70%縮まった。

硬さも柔らかくなり、鼠径部のリンパ節腫脹も豆サイズになった。

 

会陰部には力が入るようになり、朝たちが回復。

尿意があっても20分間は我慢できる。

下半身にも筋力がついてきた。

 

この患者さんは手術後の10年、すべての財産と時間を費やして治療に走り回ったけど、効果はなかったです。

 

この患者さんは、私が研修終わってから最初診た人。

 

患者さんの苦痛を解決できて良かったです。

ニハイシャ先生の教えに感謝します。

 

治療例2:慢性気管支炎の咳と痰・心不全の動悸・夜間頻尿が改善した例

 

男性。87歳。痩せ型。

慢性気管支炎と心不全。

 

症状は発熱、咳、喘息、動悸が10何日も続いている。

ずっと田舎で西洋医学の治療したけど、悪化して今は咳で泡状の白い痰がたくさん出ます。

 

そして、唾液が口から垂れる。

吸気が困難で仰向けになれない。

食欲不振。

食べる量はとても少ない。

大便は1日2~3回、形がある大便。

(病気になる前は長期的な便秘で、2~3日に1回の大便でした)

 

小便は1日15回。尿量は少なくて色は透明。

夜間の小便は4~5回。

手とおでこが熱い。

両側の目の下は赤い部分がある。

 

脈診は細数。

脈は1分に90以上。

拍動が強弱不均等で、リズムが崩れている。

舌苔は真ん中が薄い黄色で赤くて乾いている。

両側は白くて湿気っぽい。

 

診断:里寒。脈結代。陰陽は分かれる寸前。

 

治療:(単位は銭)

炙甘草5、生姜2切り、桂枝3、人参3、升地2、アギョウ3(3袋に分けて、毎回飲む時に1袋を溶かして飲む)、麦門冬5、麻子仁2、ナツメ10個、◯◯2,◯◯3、◯◯2、乾姜2、桔梗10、◯◯3,麻黄3、細辛2、◯◯3、◯◯3、半夏3、五味子3、◯◯3、加工したトリカブト6、澤瀉5、茯苓5、白朮3、烏薬5、柴胡3、栀子3、川芎3。

 

漢方薬を3日飲んでから再診察に来ました。

咳は著しく減って動悸は消失。

仰向けで寝られる。

話す時の咳もなくなり、痰の量も著しく減りました。

 

発熱は消えて、口から唾液を垂らすのも消えて、体力の改善は著しい。目の下の赤い部分は減って、食欲があり食べる量も増えた。脈診ではまだ細数、でもリズムは崩れてない。

 

10日後、諸症状が消えて食べる量が少ないのが残って、患者さんは薬を持って田舎に帰りました。

 

患者さんの病状は良くなったけど、処方箋の内容が多すぎる感じがするので、ニハイシャ先生に教えて頂きたいです。

 

治療例3:高血圧症・動悸・頭痛が10日で治った例

男性、40歳、少し太っている。高血圧。

症状は動悸、頭痛がある。検査では2年前から高血圧(160-180/100)。彼は西洋医学の大学卒業。西洋薬の毒性を知っていて、ずっと西洋薬の治療は受けてないです。

 

体力は普通で、食欲が良い、肉類を食べたがる。

汗をかきやすくて、特に寒がりでも暑がりでもない。

 

手は暖かくて足は冷たい。

喉は渇く、温かい飲み物をほしがる。

大便は1日2~3回。便は硬めでお腹がよく張り、おならはしない。

小便は中~深度の黄色。

 

舌苔は黄色で分厚くて、湿気がある。

脈診では沈細。

 

診断:中焦の湿気、陽明病の熱証。

治療:(単位は銭)

石膏4両、知母5、炙甘草6(動機があるので)桂枝3、茯苓5、白朮3、猪苓5、澤瀉5、防已3、◯◯3、◯◯3、川芎3、牡丹皮3、柴胡3、黄芩3、◯◯3、◯◯3、◯◯3、◯◯3(3袋に分けて毎回飲む時に溶かして飲む)。

 

1週間後、患者さんが言うのはだいぶ改善されました。

食欲だけまだ大きい。処方箋は変えず、石膏だけ5両に増加しました。

 

10日後、血圧は正常値になり、動悸は消失。

体力は良くなり、肉類ばかり食べたい気持ちが消えて、体重は下がりつつある。

 

処方箋で芒硝を削除し、ほかはそのままで飲み続けることにしています。

 

李哲の感想と解釈

治療例1を見ると、患者さんが可愛そうだとしか言えない。

西洋医学の手術してから10年、全財産と時間を費やすながら治療したけど、良くなってないです。

 

中医学の1ヶ月の治療が、この10年の治療よりも良い。

中医学の恩恵を受ける患者さんが増えたら、全財産を費やす必要がなくなります。 

 

貴方には10年が何回あると思うでしょうか?

 

以下は私の各治療例に対する簡単な解釈。参考になると幸いです。

治療例1の解釈

すぐお腹が空く、お腹が空いた時にすぐ食べないと手が震える。ひどい時は気を失う。これは低血糖症状。

 

低血糖症状の原因は、胃が部分的(もしくは全摘)切除されたからです。

 

西洋医学ではかっこいい病名をつけていますね、「ダンピング症候群」。

 

胃は切除しなくても治るのに、ダンピング症候群はあなた達が作り出したものでしょう?笑うしかないです。

 

低血糖症状の治療法に関して、西洋医学は「食事に気をつける。お腹が空いた時に、すぐ食べられるものを持ち歩いて下さい」と言うだけ。

 

これって治療ですか?

患者さんはいつまで食べ物を持ち歩けば良いでしょうか?

 

私のお父さんも、このような症状がありました。ただし、私のお父さんは糖尿病だと診断されています。

 

糖尿病であろうと低血糖症であろうと、症状が同じであれば治療法も同じ。これが中医学の治療原則。

 

私のお父さんは中国に帰って漢方薬を飲んでから、すぐ症状が消えました。以前はお腹が空くと落ち着かない、手が震えるなどの症状、すべて消失。

 

治療例2の解釈

仰向けで寝れないのは、肺に水が貯まっているからです。この場合は、心臓にも必ず問題が起きる。何故かと言うと、心臓と肺は隣同士。影響を受けない訳がないです。

 

治療としては心臓と肺、両方治さないといけない。

鍼灸治療を例にすると、背中の肺兪と心兪は両方とも刺さないと、病気はまた再発する。

 

心不全に関しては、過去記事にも書いています。どうぞご覧ください。

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li-hari.hatenablog.com

 

治療例3の解釈

動悸、頭痛は宿便が貯まっているのが原因。

一番の目印は、舌苔が黄色くて分厚いこと。

 

脈診では体内の冷えも見えますが、それは二の次。一番の問題は胃腸の毒(湿気と宿便)を先に出すこと。

 

だから、処方箋には便を柔らかくする芒硝。湿気を出す白朮、茯苓、澤瀉、防已などが入っています。

 

鍼治療の場合、湿気を出すのは定番の陰陵泉・地機・三陰交。 

便通が良くなった例もアップしています。以下は一つの例、参考にしてください。

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~続く~

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日光で腕にじんましんが出るのを鍼4回で治した例。日光アレルギーの原因は「血虚証」。

【※本記事は2020-02-25更新しました】

 

日光で腕にじんましんが出るのは、鍼4回で治った女性

 

こんにちは。李哲です。

今日は私の鍼治療例。

 

一人の女性。

ずっと通っている方ですが、たまに他の主訴があると治療する感じでした。

 

ある日、彼女がいうのは、「日光を浴びると、腕によく赤かゆいじんましんが出ます。今日は左肘の上に出ています。」

 

私がよく見たら、確かに左肘の上に赤い斑点がありました。

以前彼女が言わなかったのは、もしかして忘れたから?

 

治すのは簡単なので、今日はいつもの鍼以外に曲池穴を追加。

 

鍼が終わって、彼女がトイレに行ってきて言うのは、「なんか痒いのが減りました。赤いのも減った気がします。」

 

1回だけの鍼なのに、こんなに早く反応して私もびっくり。

その後、4回くらい曲池を刺して、左腕の赤いじんましんは出なくなりました。日光を浴びても、ほとんどかゆい湿疹が出ないそうです。

 

日光で赤痒くなるのが消えたと思ったら、その後は赤い丸(痒いじんましん)がボツボツと現れました。最初はお腹、脇に現れたけど、これも鍼をして3回くらいで消えました。

 

計4回で治療が終わり。

2020年になった今、彼女はまた定期的に通っていますが、日光でじんましんが出る症状は再発してないです。

 

衝撃:1円玉サイズのじんましんは、鍼した翌日に消えた

 

最後に現れた1円玉大きさのじんましんは面白かったです。

足の血海、三陰交、築賓を刺して、次に来たとき見たら消えたのです。

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彼女が言うのは、「翌日に赤いのが白くなって消えましたよ。」

 

私が聞かなかったら、彼女もこの症状を忘れたでしょう。 

鍼治療でつらい症状が治り、すぐ忘れてしまう方はたくさんいます。以下は一人の症例、参考になると幸いです。

 

www.li-hari.net

日光アレルギー原因は「血虚証」

 

日光を浴びるだけで皮膚がブツブツなったり、赤痒くなるのは、中医学の言葉で言うと「血虚証」。いい血液が足りない意味です。

 

日焼けしたあとに、なかなか元の色に戻らないのも、「血虚証」が原因です。

 

西洋医学の血液検査では正常値かも知れませんが、中医学の診断では「血虚」だと言います。中医学には自分の診断基準があるので、西洋医学の診断とは違う。

 

 

 

血虚証を補う方法:漢方薬、鍼灸

 

血を補うのには、漢方薬若しくは鍼がオススメ。1回で治るとは限らないけど、3~4回やってみれば効果が分かります。

 

彼女の血液が足りないのは、睡眠の質が悪いのと、強いストレスで肝臓と消化器系がやられているからです。

 

長い間のマイナス感情、強いストレスは確実に内臓に負担をかけて、たくさんの毒素を作り出す。中医学では「七情所傷」と言います。

 

残念なのは鍼で経絡の流れを良くして、血液中の毒素を分解できるけど、ストレスのもとは無くせない。これは患者さん本人に、治してもらうしかないですね。

 

薬物中毒の薬疹であろうと、強いストレスからくる毒素であろうと、曲池・血海などはとても良いツボで、皮膚の病気には役に立ちます。

扁桃腺、喉が痛いのが5分で緩和

こんにちは。李哲です。

今日は3番目のおばさんに針をした記録。

 

2018-10-16

主訴はいつもとおりなので、ツボもさほど変えてない。

 

うつ伏せでは大ちゅう(骨会)、後谿穴、束骨、腎兪、志室、京門、大腸兪、腰陽関。

 

本当は命門に刺したかったけど、椎間板が潰れて隙間がなくなったので下の腰陽関に刺しました。腰陽関も腰痛には、とても良いツボです。

 

背中の鍼をする時、鍼に刺されたようなかぶれ物があったから、おばさんに聞きました。

 

「これは何の傷あと?」

「昨日、品川の大きな病院に行って検査がてら鎮痛剤を注射したよ。そして今日また病院に行ったら、先生に痛みが減ったかと聞かれて、全然変わらないと答えた」

 

私はおばさんに話しました。

「このようなブロック注射は、利より害のほうが多いです。鍼で腰痛はなくなるので、注射はやらないでください」

 

腰痛はほとんど腎虚証で、腎臓の気が足りないのが原因です。注射すれば腎臓の気が増えるでしょうか?鎮痛剤を体内に入れると逆に悪くなるだけです。

 

以前足つぼ・整体をやっていた時、何人かブロック注射したのを見たことありました。以下は一人の例。

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li-hari.hatenablog.com

 

おばさんはMRIも撮ったけど、原因が分からない。病名が確定できないだそうです。

 

それもそうでしょう。

西洋医学の機械では、形ができたものしか写りません。たとえば腫瘍、筋腫。

 

形が出来上がる前の、中医学でいう気、瘀血、痰などは、CT・MRIでは分からないのです。

 

たとえ病名が分かったとしても、西洋医学では治す方法がありません。

神経を麻痺して肝臓がんを引き起こす鎮痛剤、体にダメージが強い手術以外に何があるでしょうか?

 

この前、一人の患者さんからとても悲しい話を聞きました。

親族がひどい腰痛で歩くのが大変、そして手術を受けたら神経が切られて、今は車椅子の生活になっている。

 

手術しなければ、まだ歩けました。

しかし、手術後には車椅子の生活。永遠に歩けなくなっています。

 

これも治療の必要悪ですか?

鍼はどんな腰痛も治せるのに、なぜ鍼治療を薦めないでしょうか?

 

話が長くなりました。

雑談は置いといて、おばさんの施術記録を続きます。

 

仰向けで刺した鍼は、天枢、中脘、下脘、支溝、照海、太谿、復溜、合谷透後谿穴。

 

以下は仰向けでの針の画像です。

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照海、太谿、復溜に刺した鍼。

 

仰向けで針を刺し終わったごろ、おばさんが言うのは

「この数日、風邪を引いたのか扁桃腺が痛い。風邪を引くといつも喉に来るんだよね。扁桃腺が腫れたり…」

 

「早めに言って~~よ。でも良かった。手のツボを、一つだけ追加すればいいから」

 

おばさんは緊張して、「え?手のどこに刺すの?」

私が肘のところを指したら、おばさんはOKだそうです。手のひらだったら断固反対したでしょう(笑)

 

扁桃腺炎と喉が痛いのには、尺沢を追加すれば良い。

以前だったら照海、列缺など刺したけど、新しい使い方を勉強したので、尺沢一つのみにしました。

 

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尺沢、支溝、合谷透後谿。

 

針を刺した5分後に聞いてみました。

「扁桃腺はまだ痛いですか?」

「仰向けが原因なのか、よくわからない」

 

わからない事はないでしょう。

扁桃腺が腫れたときは、唾液を飲み込むだけでも痛いから。

 

鍼を全部取ったあと、もう一度扁桃腺の状況を聞いてみました。

 

おばさんは信じられない顔で、「鍼ってこんなに早く効く?さっきより痛くないな…」

 

私「鍼は効果が出る時は、とても早いです。何十年の腰痛は回数がかかるけど」

 

自宅に帰ったあと、おばさんはラインを送ってくれました。

「去年と比べて、腰痛は3割良くなった感じ。今は走れるし歩ける、ありがとう。頑張って鍼に行くね~扁桃腺はもう痛くない」

 

百聞は一見にしかず。

風邪で扁桃腺、喉が腫れて痛い時、尺沢穴を刺してみてください。ビックリ仰天するくらい効果が出ます。

精神分裂病(統合失調症)、多重人格を桃核承気湯(とうかくじょうきとう)で治した例

こんにちは。李哲です。

 

今日は中国・郝万山先生の漢方治療例を翻訳しました。

郝万山先生は北京中医薬大学の教授、博士課程の導師、主任医師。『傷寒雑病論』を推奨し、その処方でたくさんの患者さんを治しています。

 

今日紹介するのは、その中の一つ。

精神分裂病だと言われた女性が、どのように治ったかを記録した内容です。

 

もとの中国語リンク先は、

http://www.360doc.com/content/13/1115/15/268489_329435324.shtml

翻訳文

20年前、22歳の女の子がお母さんの同伴で来ました。

 

女の子の症状は、生理になると煩躁不安が始まり、家の中でじっといられない。情緒不安定で気持ちのコントロールができない。

 

私は女の子に聞きました。

「いつからこんな症状がありましたか?」

「14歳で初めて生理が来たときからです。焦燥感で情緒不安定。生理になる前から座っても立っても不安で、生理になると気持ちのコントロールができません。大声で叫んだり喧嘩したり、もしくは走り回ったり踊ったりします。ひどい時は裸足で道端を走ります。」

 

「生理が終わると普通の人になりますか?」

「そうです。皆さんと同じように、学校に行けて仕事もできます。」

 

「病院の診断はなんですか?治療してどんな感じですか?」

「北京のすべての精神疾患を治す病院に行きました。電気ショック療法以外に、精神分裂症の薬を全部試したけど、まったく効きません。」

 

「生理の周期は規則正しいですか?」

「生理不順です。来るときも来ないときもある。」

 

「生理の前だと分かりますよね?」

「分かります。イライラして情緒不安定になり、大便が固くて出づらい、口の中に変な味がすると、私はもうすぐ生理であるのが分かります。もうすぐ自分が病気発作するのも分かります。」

 

「西洋医学の診断はなんですか?」

「すべての病院の診断は、周期性の精神分裂症です。」

 

皆さんも存じたように、精神分裂症は簡単に治るものではない。いったん、精神分裂症だと診断されたら、彼女の一生は普通の人の生活ができなくなります。

 

私も精神分裂症の治療に対して、非常に頭が痛かったです。

20年前はさらに経験が少なかったので、彼女に話しました。

 

「先に生理不順を治してみましょう。生理時、血の塊が多いですか?」

「多いです。生理の前は腹痛と腰痛があり、生理が来てもスッキリ終わらない。イライラして情緒不安定。そして、大便が硬くなり口の中も変な味になります」

 

「口の中はどんな味ですか?」

「とても苦いです」

 

「そうですか~生理になる前に、自覚症状が現れたらこの処方を飲んでください。3日分。」処方したのは桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

 

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桃核承気湯の一つの生薬:芒硝(ぼうしょう)の画像。

彼女の大便が硬いので、この処方にしました。3日分だけ。

 

そして、飲み方を伝えました。

「2日飲んで生理が来たら、残りの1日分は生理が始まってから飲んでも良い。3日飲んでも生理が来なかったら、もう少し漢方薬を買って、生理が来る日まで飲んでください。」

 

最初の1ヶ月。

彼女は2日目まで飲んだら、生理が来ました。

この漢方を飲んだとき、大便がとても順調。1日目は大便が3~4回。2日目は大便が2~3回。3日目は大便が1~2回。

 

彼女は煩躁、イライラが以前よりだいぶ少ないことに気づきました。自分の気持ちのコントロールができたのです。

 

次の生理が始まる前に、彼女はまた3日分の漢方を飲み始めました。飲んだあと、症状は先月よりさらに軽くなりました。

 

3回治療してから、彼女はほとんど発作してない。

しかし、生理が終わると非常にだるくなる症状が増えました。

 

彼女は私に話しました。

「連続3ヶ月飲んで精神分裂症はなくなったけど、生理が終わったあと非常に疲れやすいです。」

 

私が思ったのは、瘀血を出す漢方で少し貧血気味になっている。生理のあとは、気血を養いながら痰を減らす漢方が必要。

 

6ヶ月くらい治療してから、彼女の周期的な精神分裂症はなくなり、西洋薬も要らなくなりました。

 

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桃核承気湯の一つの生薬:桃仁(とうにん)の画像。

 

1977年、文化大革命騒動が終わって、中国は大学入試試験を復活し彼女は大学に入ったけど、入試点数は非常に高かったです。これは彼女の智力発育が良いことを証明します。

 

彼女はこの病気があったせいで、結婚するのが遅かったです。私は彼女の結婚式に呼び出され、彼女の行動・話すのをよく観察したけど、すべて正常な人みたいでした。

 

私は彼女にこっそり話しました。

「以前の症状が完全になくなっていますね。」

「郝先生、この場で私の過去の病気を知っているのは先生だけですよ。必ず秘密を守ってください。精神分裂症になった人は、結婚相手を探すのも大変です。」

 

私「もちろん、秘密を守りますよ。」

 

彼女はその後、息子さんを一人産みました。今は14~15歳くらいでしょうか。

彼女はアメリカの会社で働いています。プレッシャーは強いけど、この何年間は再発してない。生理も順調です。

 

生理痛、生理時の精神病を治すとき、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)はとても効果が良いです。

李哲の感想:

西洋医学では専門的に精神科があります。

うつ病、躁うつ病などの病名を作り出して、関連の薬を売っている。

 

患者さんは良くなっているのか?

これは患者さんと周りの人が一番分かるはず。

 

私はおばさんから友人の話を聞いたことがあります。

その友人は超エリートマンだけど、ある日うつ病だと診断されて、たくさんの薬を飲まされました。その後から人がおかしくなり、一日中ぼっとする。仕事もできなくて、会社を止めるしかなかった。

 

その友人に残ったのは活気がない体。性欲がなくなり、完全なるぼっき不全になって、何をするのにも興味がない。一日中ぼっとしてテレビばかり見ている。

 

言葉が悪いけど、廃人になっています。

 

しかし、西洋医学の先生は、気分が落ち着いているから治療は有効だと言うでしょう?

 

私から逆に質問したいです。

患者さんがこんな状態になって、治療は成功だと言えるでしょうか?

 

中医学の先生からみたら、これは明らかに悪化しています。このまま行くと薬物中毒で死ぬかも知れません。

 

精神科の薬、特に人を興奮させる薬は、人工的なヘロインで自然な麻薬よりも副作用が強くて中毒性があります。だから、病院でも厳重に在庫管理をしないといけない。

 

アメリカの漢方医:李宗恩博士が書いた、精神科の薬と無差別殺人事件に関しての記事、ぜひ1回目を通してください。

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中医学は大昔から精神病の記録があります。

しかし、本当の精神病はとても少ない。

 

ほとんどの患者さんは、体に宿便がたまりすぎて、長年の瘀血がたまって精神がおかしくなっている。便秘を治して、瘀血を出せば、精神も正常になります。

 

あと女性の場合は、子宮に瘀血というか邪気(じゃき)が入った時に、精神がおかしくなる。これは生理を治せば、自然に精神状態も良くなります。

 

上記の治療例を見て、精神分裂病の処方箋=桃核承気湯(とうかくじょうきとう)だと勘違いしないでください。

 

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は生理前の便秘、瘀血を治せるから、精神分裂病も良くなっただけ。具体的な処方箋は、必ず信頼できる漢方医にたずねてください。

 

便秘も瘀血もないのに、精神がおかしい。

このとき、中医学は治療できるのか?

 

治せる生薬はあります。しかも、めちゃくちゃ安くて、拾いに行けばあるやつ。『神農本草経』に書いてあるので、こちらでは省略します。

  

『黄帝内経・霊柩・本神』に書いたのは、『心気虚則悲、心気実則笑不休』。

 

直訳すると、心臓の気が弱いと悲しくなり、マイナス気持ちに落ちる。

心臓の気が強すぎると、ヘラヘラ笑いが止まらない、ハイテンション。

 

鍼治療のキーワードは心臓を調整すること。

もちろん、瘀血と宿便は先に出すべきです。

 

基本的な事をやって、そのあと心臓を調整すれば、精神疾患も自然に治る。

 

人工的なヘロインを飲み続けてヘロイン中毒になるか、鍼灸・漢方薬などの自然療法で治すかは、皆さんのご自由です。

1週間の漢方薬を飲んで半年後に来る女性、つい不妊症が治って妊娠2ヶ月

こんにちは。李哲です。

今日はアメリカでの中医師:鄭智城先生の文章を翻訳しました。

 

中国語本文のリンク先は、 

西印度裔女子怀孕两个月_郑智城

(2012-04-25 07:15発表)

翻訳文

今日一人の女性から電話が入りました。

「は~い。私はSusanです。彼氏の胃酸が逆流する薬をもらいたいけど…」

「分かりました、良いですよ。来て下さい。」

 

このSusanは西インド籍の女性。

皮膚が少し黒くて、身体がとても大きい。

 

私はもう一人の黒人患者さんがいて、毎年アフリカ大陸に行ってボランティアをするそうです。黒人患者さんが言うのは、向こうの黒人女性はみんな”Large”。

 

私は患者さんの話で大笑いしました。

 

Susanは来たあとに、私はすぐ漢方薬を用意しました。

もちろん、処方箋は「旋覆花代赭石湯」。

 

「旋覆花代赭石湯」の症例は、以下の記事もあるので良かったらご覧ください。

 

www.li-hari.net

 

この漢方薬、彼女の彼氏は去年の12月から6日だけ飲んでいます。良くなったけど根治はしてない。

 

今日は処方箋をもう一度見たら、なんと比例を間違えてました。

 

旋覆花と代赭石が多すぎて生姜が少なすぎ。党参がまた多い。

正しい比例は3:1:5:2。

そうじゃなかったら、漢方薬の力は下半身に行ってしまって、胃腸には止まらないのです。

 

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旋覆花(せんぷくか)の画像

 


 

Susanは2年前から、不妊治療の為に来ました。

でも、毎回1週間の漢方薬をもらって、半年くらい後にまた来る。

 

1週間の漢方薬を、半年に分けて飲んだですかね?

 

前回、彼女が来たのも去年の12月。

その後は連絡がなかったです。

 

私は漢方薬を用意する時、彼女に聞きました。

「まだ不妊治療を続きますか?」

 

彼女はニコッと笑って答えたのは、「妊娠2ヶ月目です。」

私「おぉぉ!おめでとうございます!」

 

彼女が帰ったあと、カルテを出して前回は何か特別な処方でもしたかな?と調べました。

 

特別な処方もなかったです。

前回、彼女の状態は脈微。舌は薄い赤。薄いグレーで厚い舌苔。当時は喉が渇く、朝起きて冷たいのが飲みたがる。

 


 

処方は半夏3、陳皮2、麦門冬4、党参3,山薬10、炙甘草2,芍薬4,蓮子5、鎖陽3。

 

二つ目の処方は白朮3,山薬10、鶏内金2,枸杞の実4、山萸 肉4、澤蘭3,益母草2,陳皮2,玄参3。各3日分でした。

 

おそらく、2つ目の処方が主に関係しているでしょう。

  • 鶏内金と澤蘭と益母草が血の流れをよくする。
  • 白朮と山薬は脾胃を強化。
  • 枸杞の実と山萸肉が腎臓と肝臓を補う。

1つ目の処方は、主に血を補うものです。

 

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山萸肉の画像

 

Susanは私に質問がありました。

「早漏の漢方薬も入れてくれますか?」

私「もちろんできます。」

 

外国人は面白いですね。

なんでも聞く。

李哲の感想:

胃酸逆流して胃がムカムカする・胸焼けがするなどの症状は、漢方薬以外に鍼灸でも簡単に治せます。

 

以前書いた記事があるので、参考にして下さい。

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li-hari.hatenablog.com

 

男性の早漏の原因は腎臓にあるので、鍼灸の場合はお灸と針、両方使います。

 

お灸のツボは、以前にも紹介したもの。

他にもありますが、この2つのツボで十分効果が出ます。

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li-hari.hatenablog.com

 

針もだいたい同じツボを刺す。

関元と中極を刺した時、よく男性の患者さんから話を聞きました。

「垂直に一番下の尿道までジンジンする!」

 

患者さんの反応で分かりますが、この2つのツボは生殖器系に直接の刺激があり、もちろん生殖器系の病気も治せます。

 

何も食べないと何日で死ぬ?『黄帝内経』の答えから見る中医学の解剖学

【※本記事は2019-06-03更新しました】

 

「中医学には解剖学がない」と思うのは間違い

こんにちは。李哲です。

今日は中医学の雑談。

 

人体解剖学だと、皆さんはすぐ西洋医学を思い出すでしょう。

「西洋医学=人体解剖」のイメージ。

 

「中医学に解剖学がある???中医学には気・経絡・陰陽など、わけわからん抽象的な名詞だけ。中医学には解剖学がない!」と思うかも知れません。

 

実は、これは中医学に対する誤解です。 

何も食べないと何日で死ぬ?中医学の『黄帝内経』の答え

 

一つの例をあげます。

「何も食べないと何日で死ぬのか?」の質問に対して、『黄帝内経』には解剖学に関する面白い答えがありました。

 

以下は『黄帝内経・平人絶谷論第三十二』より

 

黄帝曰:愿闻人之不食,七日而死,何也?

伯高曰:臣请言其故。

胃大一尺五寸,径五寸,长二尺六寸,横屈受水谷三斗五升,其中之谷,常留二斗,水一斗五升而满,上焦泄气,出其精微,愫悍滑疾,下焦下溉诸肠。

小肠大二寸半,径八分分之少半,长三丈二尺,受谷二斗四升,水六升三合合之大半。

回肠大四寸,径一寸寸之少半,长二丈一尺,受谷一斗,水七升半。

广肠大八寸,径二寸寸之大半,长二尺八寸,受谷九升三合八分合之一。

肠胃之长,凡五丈八尺四寸,受水谷九斗二升一合合之大半,此肠胃所受水谷之数也。

平人则不然,胃满则肠虚,肠满则胃虚,更虚更满,故气得上下,五脏安定,血脉和利,精神乃居,故神者,水谷之精气也。

 

故肠胃之中,当留谷二斗,水一斗五升。

故平人日再后,后二升半,一日中五升,七日五七三斗五升,而留水谷尽矣。

 

故平人不食饮七日而死者,水谷精气津液皆尽故也。

  

文章には各臓器の長さ、太さ、重量、容積など記載しています。

長さの単位は現代と違いますが、比例関係から見ると、現代の解剖学とほぼ同じ。

 

もっとも面白いのは、黄帝の質問:「なぜ人は1週間食べないと死ぬのか?」

 

伯高の答えを直訳すると、健康な人は胃腸に2斗の食べ物と1斗5升の水が貯蓄されている。つまり、常に3斗5升の栄養素があります。

 

健康な人は1日2回、便が出る。1回の出る量が2升半、1日だと5升が便で出ます。5升✕7=35升=3斗5升。だから、1週間後には胃腸の栄養素がなくなるので、人は死ぬ。

 

これは一般的な生理学で、異例の時もあります。遭難10日~1ヶ月、食べ物がない状態で生きている人がいます。個人差があるのは体質・精神状態が原因です。

 

精神状態が体に及ぶ影響は、以下の記事でも討論しました。

どうぞご参考に。

 

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古代の中医学にも解剖学がある原因

 

古代の中医学は、なんで解剖学に詳しいのか?

考えられるのは、古代の処刑が多かったから、こういう具体的な長さ・容積・太さなどのデータが残っている。

 

ヨーロッパの解剖学の歴史を見ても、似ているのがありますね。当時は死体の解剖が許されてないので、こっそり死体を墓から盗んで研究した人もいると、日本の鍼灸専門学校の授業で聞きました。

 

現代医学は解剖学からスタートしたけど、残念ながら解剖では経絡の存在が分からない。中医学は経絡の存在を知っていながら、解剖学のデータもあります。

中医学が研究するのは、目に見える解剖学ではなくて、見えない「気」

 

中医学は昔から解剖学があったのに、なぜ西洋医学みたいに細かく神経・筋肉・血管などをもっと研究してなかったのか?以下は私の推測です。

 

体の主役は見えない「気」で、見える臓器は「脇役」

 

病気治療で解剖学は、さほど意味がない

 

何故かと言うと、体の働きを牽引している「気」と「経絡」が主役で、目に見える各臓器は脇役だからです。

 

中医学が研究するのは主役。

西洋医学が研究しているのは脇役です。しかも脇役すら分かってない。だから、虫垂・扁桃腺はなくても大丈夫だという笑い話があります。

 

本当に体には必要がないゴミでしょうか?

以下の記事では詳しく討論しました。

 

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中医学の有名な言葉がありますが、『気為血之帅、気行則血行』。気は血を引っ張って行く意味です。

 

大昔から中医学は知っていました。

心臓のポンプの力だけでは、血液がすごいスピードで全身を回らない。必ず前で気が引っ張っているから回れる。そして、気が血管の外側を締めているから、血液がすごいスピードで回っても飛び出さない。

 

経絡のスピードは、果たして秒速何kmあるだろう?

以下の記事で分析しました。

参考になると幸いです。

 

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中医学では解剖学を完全に捨ててはない

 

注意すべきなのは、中医学は解剖学を否定していません。

心臓の経絡(心経)。膀胱の経絡(膀胱経)…各臓器に対して経絡は、ちゃんとついています。

 

胃は食べ物を消化して腸は吸収・肺は呼吸を司る・膀胱は尿を貯蔵・胆嚢は胆汁を分泌して消化を助けるなどは、現代医学の理論と同じです。

中医学の臓器の定義は、西洋医学よりも広い

 

中医学と西洋医学の違いは、中医学でいう五臓六腑は本来の臓器とほかの所まで入れて、定義をしている。つまり、西洋医学でいう臓器よりも範囲が広い。

 

一つの例をあげると、中医学でいう脾臓は、西洋医学でいう脾臓とすい臓、両方の臓器と関連する内分泌系も入れています。

 

手術が必要な外科では、神経・筋肉など細かく分類するのは有利だと思います。しかし、内蔵の病気に関しては、外科のやり方は合わない。

 

外科の手術で内科の病気を治そうとすると、必ずたくさんの死人が出る。これは以前の翻訳文でも触れています。

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li-hari.hatenablog.com

 

人間の体は、個人作戦ではなくて、幅広い範囲で臓器と内分泌系・リンパ系・神経系統などが協力して働いています。単なる臓器の働きを見るだけでは、全体を失う。

 

病気治療では細かく見るのではなく、広範囲でものを見る中医学のほうが有利です。

 

臨床での結果を見ても分かりますが、内科の病気治療では中医学が王道です。西洋医学よりも副作用がなくて効果が良い。

 

共同作業で病気を治すのは、漢方薬の特徴でもあります。

以下は、葛根湯の共同作業の仕組みを詳しく分析した記事です。どうぞご参考に。

 

www.li-hari.net

まとめ

なぜ人間は何も食べない、飲まない状態で7日間生きていられるか、その仕組みが分かったでしょうか。

 

これは神さまが人間を作ったとき、念のためにくれた災難に備えるためのプレゼントだと思います。

 

『黄帝内経』には面白い記載が多いので、今後時間を作って翻訳しようと思います。   

溺れ死んだ人を、鍼で緊急救命【翻訳文】

こんにちは。李哲です。

今日は中国・周德宜先生の鍼治療例を翻訳しました。

 

溺れた子供の緊急救命の症例です。

 

中国語本文のリンク先は、

古今名医针灸医案赏析_起点中文网_小说下载 

翻訳文

曹さん、男の子、12歳、学生。

初診は1979年7月23日。

 

川で遊んだとき溺れ、40分後に他の人に発見されました。当時の症状は呼吸が止まって、四肢が氷みたいに冷たい。皮ふは紫色になり、口から白い泡が出て顔色は黒い、ベロが外に出てました。

 

お腹は大きく腫れて、体はまだ柔らかい。心臓の動きはまだある。

 

治療:

①患者さんを通気性がよい所に移動してうつ伏せを取り、腰を高くして口を開けて、肺と胃の中の水が出るようにしました。

 

②会陰、水溝(人中穴)、少商に鍼治療。

会陰は5分間、水溝(人中穴)は2分間、少商は1分間の施術。

みんな素早く刺して、大きく回して瀉法を行いました。

 

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人中(別名:水溝)。緊急救命のときに使うツボ。意識を戻す作用がある。

 

③刺絡:三稜鍼で中衝穴からなるべく血を出す。

 

④細辛、半夏を各0.5gを粉にして、鼻から吹き入れてくしゃみが出るようにしました。

 

治療して1分くらい経ったら、患者さんは長い息ができて、目玉が動くようになり、意識が戻りました。

 

治療後も続けて関元と腎兪を温めることで、寒気と水を出すようにしました。

 

以上の情報は、『王振琴、周德宜運用鍼灸術治療急症経験挙隅』より引用

『中国鍼灸』(雑誌)1999,(01)、32-34に載せています。

李哲の感想:

先にツボの説明をします。

この人中穴は唇と鼻の間にあって、爪で強く押すと意識を戻す作用がある

 

普段は脳卒中・熱中症などで倒れた時によく使われます。覚えておくと、ある日他人を助けられるかも知れません。

 

以前、ニハイシャ先生の師匠:周左宇先生も溺れ死んだ軍人たちを救ったことがあります。

会陰穴:溺れ死んだ人を救えるツボ(2018-02-27更新)

 

まさか、ほかの鍼灸医の例を見るとは思わなかったです。

 

世の中にはすごい鍼灸医が、たくさんいる事がわかりました。ネットがあるから、その鍼灸医たちの治療例が無料で見られて、良い勉強になりますね。

 

よく見たら、溺れ死んだ人を救うのは、他にも方法がありました。以下は古文の引用。

 

「曲骨。卒死、针一寸、补之。溺死者、令人倒驮出水、针補、尿屎出则活。余不可针」

   明朝・高武の『针灸聚英』より

 

「凡溺死、一宿尚可救、解死人衣、灸脐中即活」

   宋朝の名医:王执中が書いた『鍼灸資生経』より

 

これで分かりますが、会陰穴以外に曲骨も治療できる。へそにお灸するのは、一晩ならまだ救えられると書いてあります。

 

昔の鍼灸医たちのおかげで、助かった人たちは少なくなかったでしょう。

 

上記の男の子は、まだ心臓が完全に止まってない。体が硬直してないのが幸いのこと。もし死後硬直、心臓が完全に止まって体が全部冷たくなったら、そうとう厳しいです。

 

心肺停止状態だと西洋医学では、ほとんど救えません。しかし、心臓が止まっても心臓のあたりに多少の温度があれば、チャンスはまだあります。諦めないで1回は鍼で賭けるべきです。

 

緊急救命では西洋医学の心臓マッサージ、蘇生法、投薬治療など使うのも良いと思います。

 

気管切開で損傷が起きるか、心臓マッサージで肋骨が折れるか、薬の副作用が強いとか、もうどうでも良い。とりあえず救って来られるなら、なんでも良いじゃないですか?

 

個人的に、内科の病気治療で使う西洋薬は反対していますが、このような緊急救命で西洋医学は役に立つと思います。

 

いつか西洋医学の救急隊員も、簡単なツボを覚えて針を携帯すれば、溺れて死ぬ人が減るでしょう。夢かも知れないけど、そうなることを祈ります。